日本人統合失調症患者の洞察力と臨床因子の長期的特徴

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/14

 

 統合失調症は、洞察力の欠如を来す精神疾患である。洞察力は、時間経過とともに変化するが、統合失調症患者の洞察力に関する長期的な研究はほとんどない。さらに、洞察力と知能との関係を調査したこれまでの研究の多くは、full-scale IQを測定しておらず、認知機能の詳細と洞察力との関係を調べることが難しかった。跡見学園女子大学の酒井 佳永氏らは、統合失調症患者の2つの時点での洞察力を評価し、認知機能との関連を調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年6月28日号の報告。

 対象は、日本人統合失調症患者163例。2つの時点での洞察力を評価し、洞察力の変化パターンおよび洞察力と臨床変数との関連を調査した。さらに、認知機能と洞察力との関係を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・経時的な洞察力の変化に基づき対象患者を、不良群(洞察力が低レベルで安定)、良好群(洞察力が良好)、不安定群(洞察力が時間経過とともに変化)の3つに分類した。
・不良群は、良好群および不安定群と比較し、general intelligenceスコアが低かった。
・認知機能に関しては、言語理解は、ベースラインおよびフォローアップ時の洞察力レベルと関連が認められた。
・精神症状に関しては、不良群は、良好群および不安定群と比較し、より重度であり、とくに陽性症状が顕著であった。

 著者らは、この縦断的研究から「洞察力の変化に基づき患者を分類したところ、洞察力が低い患者では、認知機能、とくに言語理解が低下しており、陽性症状がより重度であることが明らかとなった」と述べている。

(鷹野 敦夫)