統合失調症患者の職業機能に対し、認知機能が影響を及ぼしていることが示唆されている。帝京大学の渡邊 由香子氏らは、日本人統合失調症患者の職業機能に対する認知機能の影響を評価するため、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた研究を行った。その結果、統合失調症患者の職業機能は、全体的な認知機能と関連しており、とくにBACSのシンボルコーディングスコアが、作業能力と関連していることが示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2023年3月号の報告。
対象は、統合失調症または統合失調感情障害の外来患者198例(女性:66例、平均年齢:34.5±6.8歳)。職業機能の評価には、精神障害者社会生活評価尺度の労働サブスケール(LASMI-w)を用いた。独立変数をBACS、従属変数をLASMI-wとし、重回帰分析を行った。LASMI-wスコアに応じて3群(11未満、11~20、21以上)に分類し、多重ロジスティック回帰を行った。
主な結果は以下のとおり。
・重回帰分析では、LASMI-wスコアは、BACS複合スコアとの負の相関が確認された(β=-0.20、p<0.01)。
・BACSのサブ項目の中で、シンボルコーディングスコアのみで有意な負の相関が認められた(β=-0.19、p<0.05)。
・多重ロジスティック回帰では、BACS複合スコアとシンボルコーディングスコアが高いほど、職業機能障害の程度が小さいことが示唆された。
●BACS複合スコア(β=2.39[職業機能障害レベル 軽度 vs.中等度]、p<0.05)
●BACSシンボルコーディングスコア(β=2.44[職業機能障害レベル 軽度 vs.重度]、p<0.05)
・これらの結果は、就労支援を目的とした認知リハビリテーションの評価やトレーニングに役立つ可能性がある。
(鷹野 敦夫)