統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬の実際の有効性

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/23

 

 フランス・エクス=マルセイユ大学のLaurent Boyer氏らは、統合失調症に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の実臨床における有効性を評価するため、ミラーイメージ研究を実施した。その結果、LAI抗精神病薬は、経口抗精神病薬よりも投与頻度が少ないため、コンプライアンス向上や再発リスク軽減が期待できるため、コンプライアンス不良患者では女性や35歳以上の患者であってもLAI抗精神病薬治療が推奨されることを報告した。また、アリピプラゾールLAIは、コンプライアンス良好患者にとって有用な薬剤である可能性があり、さらなる調査が求められるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。

 2015年1月~2016年12月にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者を、フランス国民健康データシステム(SNDS)に登録した。LAI抗精神病薬開始1年前(経口抗精神病薬治療中)と開始1年後、精神科医療リソース利用指標について評価し、標準化平均差(SMD>0.1で臨床的有意とみなす)を算出した。LAI抗精神病薬の有効性は、全体および年齢、性別、経口抗精神病薬に対するコンプライアンス(年間80%以上の抗精神病薬服用を良好と定義)で層別化し、分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、1万2,373例。
・LAI抗精神病薬の使用は、男性(58.1%)、若年(18~34歳:42.0%)、コンプライアンス不良(63.7%)患者でより多かった。
・LAI抗精神病薬治療により、コンプライアンス不良患者の精神科入院の回数(SMD:-0.19)、期間(SMD:-0.26)、精神科救急受診(SMD:-0.12)の減少効果が確認されたが、コンプライアンス良好患者では、その効果は認められなかった。
・第1世代LAI、パリペリドンLAI、アリピプラゾールLAIによる治療により、精神科入院(各々、SMD=-0.20、-0.24、-0.21)および精神科救急受診(各々、SMD=-0.15、-0.13、-0.15)を減少させました。
・年齢、性別による有意な差は認められなかった。
・コンプライアンス良好患者では、アリピプラゾールLAIのみが、精神科入院数の減少に寄与していた(SMD=-0.13)。
・リスペリドンLAI(SMD=0.15)、パリペリドンLAI(SMD=0.18)では、入院期間の延長が認められた。

(鷹野 敦夫)