統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/17

 

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。

 初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスは、3段階のデルファイ法プロセス(第1段階:紙面調査、1:1面談、第2~3段階:電子メール調査)を用いて収集した。文献レビューおよび専門家5人からなる運営委員会の意見に基づき、患者集団、有害事象マネジメント、機能回復に関するステートメントを作成した。専門家の意見が次の段階に進むかどうか、および合意レベルのコンセンサスが得られるかを分析ルールに従い判断した。中心傾向(最頻値、平均値)および変動性(四分位範囲)の測定値が報告され、パネリストがグループ全体の反応を参照し、以前の反応を評価することに役立てた。

 主な結果は以下のとおり。

・デルファイ法のパネリストは、フランス、イタリア、米国、ドイツ、スペイン、デンマーク、英国の7ヵ国でLAIによる統合失調症の治療経験を有する精神科医17人であった。
・パネリストに対し3つのカテゴリ(患者集団、薬剤の投与量・マネジメント・有害事象、機能回復の領域および評価)に関する73のステートメントが提示された。
・55のステートメントにおいて、コンセンサスとみなされる80%以上の合意が得られた。
・合意度が低い(40~79%)または非常に低い(39%以下)項目は、初発および発症初期の統合失調症患者における投与開始時期、有効性の喪失時のマネジメント、ブレークスルーエピソードのマネジメントであり、現在のエビデンスギャップを反映していた。
・初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAIのベネフィットが強調されており、再発、再入院、機能不全のリスク軽減に関するコンセンサスが得られた。
・LAI使用に対しては、これらのベネフィットだけでなく、症状寛解を超えた長期的な機能回復との関連性が支持された。

(鷹野 敦夫)