統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌2023年8月号の報告。
日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時(インデックス日の365日前)の1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・期間中にLAI抗精神病薬が処方された患者1,692例のうち、就労者患者55例(37.7%)、被扶養者患者91例(62.3%)を含む146例を分析対象とした。
・平均年齢は37歳、女性は74例(50.7%)であった。
・ベースライン期間中に入院しなかった患者は61例(41.8%)であった。
・フォローアップ期間中に7日間以内の入院を経験した患者は、67例(45.9%)であった。
・就労者は、被扶養者と比較し、フォローアップ期間中に入院しなかった患者の割合が高かった。
●すべての原因による入院がなかった患者の割合:69.1% vs.61.5%
●精神医学的入院がなかった患者の割合:76.4% vs.67.0%
●統合失調症関連の入院がなかった患者の割合:87.3% vs.71.4%
(鷹野 敦夫)