「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が、9月1日付で保険収載された。これを受けて9月6日、エグザクトサイエンスは「患者さん一人ひとりが納得のいく治療法を~シェアードディシジョンメイキングの時代へ~」と題したプレスセミナーを開催。坂東 裕子氏(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科)らが登壇し、乳がん治療におけるオンコタイプDXの位置付けやシェアードディシジョンメイキングの重要性について解説・議論が行われた。
化学療法を省略しうる患者とは? 再発スコア結果に基づく考え方
オンコタイプDX検査によって算出される再発スコア結果(RS)は、早期乳がんにおける術後化学療法の要否の判断材料とすることができる。TAILORx試験とRxPONDER試験の最新結果を基に、リンパ節転移が3個までのHR陽性/HER2陰性早期乳がん患者の治療選択の考え方を坂東氏は以下のように整理した。
N0、RS 0~25
50歳超:内分泌療法は化学内分泌療法に対して非劣性
1)
50歳以下:化学内分泌療法の効果はRSが16~25の41~50歳の患者、もしくは臨床リスクの高い患者に限定される
1)
N1、RS 0~25
閉経後:化学内分泌療法から得られる効果はない
2)
閉経前:化学内分泌療法による5年DRFI(無遠隔再発期間)の上乗せ効果は2.4%であった
2)
N0/N1、RS 26~100
実質的に化学療法の効果があると考えられる
2)
RSが0~25の患者は、リンパ節転移の有無によらず80~87%を占めると報告されている
3)。このことから坂東氏は「リンパ節転移が陽性だから化学療法をするのではなく、再発スコアをみたうえで化学療法の必要性を判断することで、多くの患者さんが不要な化学療法を省略することができる」と話した。
オンコタイプDX検査によりわかること・わからないこと
坂東氏はまた、この検査でわかること・わからないことを以下のようにまとめている。
オンコタイプDX検査でわかること
リンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移1~3個陽性のHR陽性/HER2陰性乳がんにおける
・内服ホルモン治療のみを5年間行なった場合の9年時点での再発のリスク
・点滴の化学療法を追加することによるメリット(再発リスクがどのくらい減少するか)
オンコタイプDX検査でわからないこと
・リンパ節転移4個以上、HER2陽性、トリプルネガティブの場合の再発率
・内服ホルモン治療を5年以上/卵巣機能抑制治療を併用した場合の再発率
・経口抗がん剤や分子標的治療を追加した場合の再発率やメリット
乳がんの遺伝子検査=BRCA遺伝子検査と考える人が多い
エグザクトサイエンスが実施した乳がん患者対象のアンケート調査の結果、遺伝子検査でわかるのは「遺伝性乳がんの情報(79%)」、「がんの発症のリスク(63%)」と
BRCA遺伝子検査を示唆する回答をした人が多く、「より自分に合った治療を選択できる(35%)」、「再発リスクがわかる(28%)」とオンコタイプDXを含む多遺伝子検査を示唆する回答は少なかった。坂東氏は、「なかには自分で調べてとても詳しい患者さんもいるが、そうでない人のほうが多い。パンフレットなどを用いながら、何がわかる検査なのかをしっかり説明することが重要」とし、そのうえで「再発リスクがどのくらいなら治療をしたいと思うかは人によって異なる。オンコタイプDXはリスクが数字ではっきりと提示されるものなので、これらのデータを使いながら、私たちは今まで以上に患者さんと話をすることが求められている」とした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)