リンパ節転移1~3個でオンコタイプDX乳がん再発スコアが0~25の閉経後早期乳がん患者において、術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィットが認められなかったことが、RxPonder試験(SWOG S1007)の中間解析で示された。米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。RxPonder試験は、米国国立がん研究所(NCI)の支援でSWOG Cancer Research Networkが主導している前向き無作為化第III相試験。
RxPonder試験で閉経後の患者に化学療法追加のベネフィットがないことが示唆された
RxPonder試験の対象は、ホルモン受容体陽性HER2陰性でリンパ節転移1~3個の18歳以上の早期乳がんの女性。再発スコア0~25の女性を内分泌療法単独群と内分泌療法後に化学療法を追加する群に1:1で無作為化し、再発スコア(0~13と14~25)、閉経状態、リンパ節の術式(リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検)で層別化した。主要な目的は、化学療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)に及ぼす影響と、その影響が再発スコアに依存するかどうかの評価であった。
RxPonder試験の中間解析で示された主な結果は以下のとおり。
・2011年2月28日~2017年9月29日に登録された9,383例のうち5,083例(54.2%)が無作為化され、追跡期間中央値5.1年で、447のiDFSイベントが認められた。
・化学療法のベネフィットと再発スコアの交互作用は統計学的に有意ではなかった(p=0.30)。
・化学療法・再発スコア・閉経状態を含むモデルにおいて、再発スコアが高いほうがiDFSが悪化し(HR:1.06、p<0.001、95%CI:1.04~1.07)、化学療法がiDFSの改善と関連していた(HR:0.81、p=0.026、95%CI:0.67~0.98)。
・事前に設定された解析で、化学療法と閉経状態の間に有意な交互作用が確認され(p=0.004)、閉経状態による解析を行った。
・閉経後の患者(3,350例、67%)においては、再発スコアを調整すると、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.97)は有意ではなく(p=0.82、95%CI:0.78~1.22、 5年iDFS率:91.6% vs.91.9%)、化学療法追加のベネフィットがないことが示された。
・閉経前の患者(1,665例、33%)においては、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.54)が統計学的に有意であり(p=0.0004、95%CI:0.38~0.76、5年iDFS率:94.2% vs.89.0%)、化学療法追加のベネフィットが示された。
これらのRxPonder試験の結果から、Kalinsky氏は「現時点のデータでは、リンパ節転移が1~3個で再発スコアが0~25の閉経後患者では、iDFSを悪化させることなく化学療法を回避することが可能だろう。一方、リンパ節転移陽性で再発スコアが0~25の閉経前患者は化学療法で有意なベネフィットがあるようだ」と述べた。
(ケアネット 金沢 浩子)