妄想性障害は統合失調症と比較し、予後不良であるといわれているが、発症年齢の差異は十分に考慮されていなかった。香港大学のChristy Lai Ming Hui氏らは、年齢をマッチングした初発精神疾患の中国人患者において、4年後の妄想性障害および統合失調症の診断に関する安定性および臨床的・機能的・神経認知的差異を調査した。BMC Psychiatry誌2023年9月18日号の報告。
妄想性障害患者71例と年齢をマッチさせた統合失調症患者71例を対象に、初発エピソードから4年間のフォローアップ調査を実施した。4年経過時点での症状、精神疾患に関する洞察力、薬剤性副作用、服薬コンプライアンス、機能、神経認知能力を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・4年時点で、妄想性障害患者の25例は、診断が統合失調症へ変化していた。
・分析には、診断が変化しなかった妄想性障害患者46例(65%)のみを含めた。
・妄想性障害患者(46例)は、統合失調症患者(71例)と比較し、精神病理学的症状がより大きく、洞察力が低下していたが、服薬に対する態度は良好であった。
・社会的機能、職業的機能、QOL、認知機能については、両疾患で同様であった。
著者らは、「妄想性障害の診断は、統合失調症の診断より安定性を欠いていることが示唆された。中国人集団における両疾患患者の臨床アウトカムが、年齢の交絡因子を除いた4年後においてほぼ同様であったことを踏まえると、妄想性障害と統合失調症は、これまで考えられていたほどには区別できない可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)