近年、頭痛は世界的な健康課題として大きく注目されている。この懸念は、とくに低~中所得国で顕著であり、青少年や若年成人における有病率の増加に現れている。このような頭痛の急増により、頭痛患者のQOLは常に低いものとなっている。しかし、世界的な影響にもかかわらず、若年層を対象に頭痛の影響を調査した包括的な研究は、いまだ十分ではない。中国・上海交通大学のXin-Yu Li氏らは1990~2019年の30年間にわたり、15~39歳における頭痛の世界的な有病率を定量化するため、本研究を実施した。結果を踏まえて著者らは、片頭痛と緊張性頭痛(TTH)は世界の健康において大きな課題であるとし、その影響の強さは国によって違いがあり、女性、30~39歳、社会人口統計学的指数(SDI)が高い集団においては、とくに影響が大きいと指摘している。The Journal of Headache and Pain誌2023年9月18日号の報告。
研究は、1990~2019年の30年間にかけて実施された。204の異なる国と地域を対象に、とくに片頭痛とTTHの影響を評価した。包括的な評価では、年齢、性別、年、地域性、SDIなどのさまざまな人口統計学的要因と、頭痛の罹患率、有病率、障害調整生存年(DALY)との関連を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・2019年の世界における片頭痛の推定患者数は5億8,176万1,847.2例(95%不確定区間[UI]:4億8,830万9998.1~6億9,629万1,713.7)であり、1990年から16%の増加が認められた。
・2019年のTTHの推定患者数は、9億6,480万8567.1例(同:8億958万2,531.8~11億5,523万5,337.2)であり、1990年から37%の増加が認められた。
・片頭痛の有病率は、南アジアで最も高く、1億5,449万169.8例(同:1億3,029万6,054.6~1億8,246万4,065.6)であった。
・高SDI地域では、1990年(人口10万人当たり2万2,429例)と2019年(人口10万人当たり2万2,606例)のいずれにおいても、最も顕著な片頭痛有病率が示された。
・SDI分類のうち、中SDI地域は、1990年(2億1,013万6,691.6例)と2019年(2億8,757万7,250例)のいずれにおいても、TTH患者数が最も高かった。
・過去30年間で片頭痛患者数が最も顕著に増加したのは、東アジアであった。
・全体として、片頭痛およびTTHの疾患負荷とSDIとの間に、正の相関が認められた。
著者らは「片頭痛とTTHのマネジメントを現代医療のパラダイムに組み込むことは不可欠であり、このような戦略的統合は、頭痛に関連するリスク因子や治療介入の重要性について一般集団が認識を深めることに寄与する可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)