動脈硬化予防のための階段利用、何段が効果的?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/11/08

 

 健康のために階段昇降が推奨されるが、いったい何段くらいを目安に上ると何に効果的なのだろうか―。今回、中国・北京大学のZimin Song氏らが検証した結果、階段昇降を毎日5回より多く行う(段数にして約50段)とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが20%以上低下する一方で、ベースラインと再調査の間に階段昇降を止めた人では、階段昇降をまったくしなかった人と比較して、ASCVDリスクが高くなることが明らかになった。Atherosclerosis誌オンライン版2023年9月16日号掲載の報告。

 研究者らは、階段昇降の強度とASCVDのリスク、およびそれらがASCVDの危険因子の存在によって変化するか否かを評価するため、英国バイオバンクからの45万8,860例の成人データを使用し、前向きコホート研究を行った。ベースラインとベースラインから5年後の再調査で収集した情報は、階段昇降、社会人口学的要因、ライフスタイルに関するものだった。ASCVDとして、冠動脈疾患(CAD)、虚血性脳卒中(IS)、急性合併症が含まれた。また、階段昇降とASCVDとの関連性をCox比例ハザードモデルで解析し、CAD/ISの遺伝的リスクスコア(GRS)に基づく疾患感受性、ASCVDの10年リスク、ASCVDの家族歴で階層化して評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・中央値12.5年の追跡調査中に、ASCVDを発症したのは3万9,043例、CADは3万718例、ISは1万521例だった。
・1日あたりの階段昇降を1~5回、6~10回、11~15回、16~20回、21回以上に区分し、対照群(ベースライン時に階段昇降1日0回と報告)と比較したASCVDのHRは、順に0.97(95%信頼区間[CI]:0.93~1.01)、0.84(同:0.82~0.87)、0.78(同:0.75~0.81)、0.77(同:0.73~0.80)、0.81(同:0.77~0.85)だった。この結果はCADとISでも同等であった。
・CAD/ISのGRSに基づく疾患感受性、ASCVDの10年リスク、ASCVDの家族歴で層別化した場合、階段昇降によるASCVDのリスク保護の関連性は疾患感受性レベルの上昇によって弱くなった。また、この関連性はASCVDのさまざまな感受性を持つ集団において広く一致していた。
・ベースライン時に階段昇降を行い、その後の再調査で階段昇降を行わなくなった人は、階段昇降を行わなかったまたは少なかった(1日あたり5回未満)人と比較して、ASCVDリスクが32%高かった(HR:1.32、95%CI:1.06~1.65)。

(ケアネット 土井 舞子)