コロナワクチン、オミクロン初期の東京で850万人の感染を回避/京大

提供元:ケアネット

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公開日:2023/11/14

 

 2022年1~5月には、全世界的に新型コロナウイルス(COVID-19)のオミクロン株BA.1/BA.2が流行していた。京都大学大学院医学研究科の茅野 大志氏と西浦 博氏は、この時期のワクチン接種による集団レベルの影響を、全国でも比較的完全な接種歴データを有する東京都のデータを用いて評価した。その結果、ワクチン接種により約64万人の感染が直接回避され、集団接種による間接的な効果も含めると約850万人の感染が回避され、ワクチン接種しなかった場合と比較すると65%の感染を減少したと推定された。BMC Infectious Diseases誌2023年10月31日号に掲載の報告。

 オミクロン株BA.1は、日本では2021年12月下旬から増加し、1日当たり約2万人の患者が発生した。この流行の少し前の12月初旬に、ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチン(起源株対応)の追加接種プログラムが確立されていた。2022年5月下旬には、4回目接種が開始された。

 本研究では、オミクロン株BA.1/BA.2が優勢だった第6波の2022年1月1日~5月27日(21週間)のデータを解析した。初回シリーズ(1・2回目)と追加接種(3回目)の接種率、および接種歴別に層別化した確定症例を分析し、ワクチン接種によって直接および間接的に予防されたCOVID-19症例数を推定した。症例報告率は25%と仮定した。直接的な効果の推定には、ワクチン未接種者とワクチン接種者のリスクを比較する統計モデルを用いた。ワクチンの集団接種により得られる効果を間接的な効果とした。直接効果と間接効果を総合した効果は、ワクチン接種プログラムが実施されなかったという反事実のシナリオを伝播モデルで推定し、リアルワールドで観察された感染者数のデータと比較することで評価した。間接効果は、総合効果と直接効果の差として算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年1~5月の東京都において、初回シリーズは47万8,000人(95%信頼区間[CI]:46.7万~48.9万、29%減少)の感染回避に直接貢献し、追加接種は16万2,000人(95%CI:15.7万~16.6万、12%減少)の、合計64万人(95%CI:62.4万~65.5万)の感染回避に直接的に貢献した。
・初回シリーズと追加接種により、850万人(95%CI:840万~860万、65%減少)の感染回避に、直接的および間接的に貢献した。
・追加接種の接種率が初回シリーズの接種率と同程度であれば、感染者数はさらに19%(376万75人、95%CI:370万9,102~380万8,214)減少した可能性がある。さらに、10~49歳の追加接種の接種率があと10%高ければ、感染者数はさらに7%減少した可能性がある。
・高齢者の初回接種率は95%を超えていた。2022年のオミクロン株流行時の集団レベルの影響は大きく、東京都に住む60歳以上において、54%の感染を予防した。

 著者は本結果について、オミクロン株のような変異株の出現といったSARS-CoV-2の進化が存在する場合でも、集団におけるワクチン接種率が高いほど、集団レベルでの間接的な効果が大きくなり、一時的であるかもしれないが、大規模なワクチン接種が集団免疫効果を誘発できると述べている。

(ケアネット 古賀 公子)