近年、動物性食品を植物性食品に置き換えることで健康に良い影響があるという報告が増加している。そこで、ドイツ・ハインリッヒ・ハイネ大学のManuela Neuenschwander氏らは、動物性食品の植物性食品への置き換えと心血管疾患(CVD)、糖尿病、全死亡との関連について、システマティックレビューおよび37研究のメタ解析を実施した。その結果、加工肉や赤肉、卵、乳製品、家禽肉、バターといった動物性食品を植物性食品に置き換えることでCVD、糖尿病、全死亡のリスクが低下することが示唆された。本研究結果は、BMC Medicine誌2023年11月16日号で報告された。
MEDLINE、Embase、Web of Scienceを用いて、2023年3月までに登録された動物性食品を植物性食品へ置き換えた場合のCVD、糖尿病、全死亡リスクの変化を検討した前向き研究を検索した。その結果、37件の研究(24コホート)が抽出された。これらの研究について、ランダム効果メタ解析を用いて要約ハザード比(SHR)および95%信頼区間(CI)を推定した。GRADEシステムを用いてエビデンスの質を評価し、moderate(中)以上の場合は、メタ解析で推定された効果が真の効果と近い可能性が高いと判断した。
エビデンスの質がmoderate(中)以上と判断された結果は以下のとおり(置き換え対象食品→置き換え後の食品:SHR、95%CI)。
<CVDの発症またはCVD死亡>
加工肉→全粒穀物:0.64、0.54~0.75
加工肉→ナッツ:0.73、0.59~0.91
加工肉→豆類:0.77、0.68~0.87
卵→ナッツ:0.83、0.78~0.89
バター→オリーブオイル:0.96、0.94~0.98
<2型糖尿病の発症または糖尿病死亡>
バター→オリーブオイル:0.94、0.91~0.98
<2型糖尿病の発症>
加工肉→ナッツ:0.78、0.69~0.88
卵→全粒穀物:0.79、0.76~0.83
卵→ナッツ:0.82、0.79~0.86
家禽肉→全粒穀物:0.87、0.84~0.91
赤肉→全粒穀物/シリアル:0.90、0.84~0.96
赤肉→ナッツ:0.92、0.90~0.94
<全死亡>
加工肉→ナッツ:0.79、0.71~0.88
卵→ナッツ:0.85、0.82~0.89
卵→豆類:0.90、0.89~0.91
加工肉→豆類:0.91、0.85~0.98
赤肉→ナッツ:0.93、0.91~0.95
非加工赤肉→ナッツ:0.93、0.92~0.94
乳製品→ナッツ:0.94、0.91~0.97
バター→オリーブオイル:0.94、0.92~0.97
赤肉→全粒穀物:0.96、0.95~0.98
乳製品→ナッツ/豆類:0.96、0.94~0.99
本研究結果について、著者らはさらなる研究が必要としつつ「動物性食品(とくに赤肉や加工肉の多量摂取)から植物性食品(ナッツ、豆類、全粒穀物など)への置き換えにより、CVDや糖尿病、全死亡のリスクが低下することが示唆された。植物性食品の摂取を増やすことは、心代謝系の健康に重要であると考えられる」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)