世界保健機関(WHO)が推奨する5つのタイミング(患者に触れる前、清潔/無菌操作の前、体液に曝露された可能性のある場合、患者に触れた後、患者周辺の環境や物品に触れた後)で手袋をしたままアルコール擦式消毒を行うことは、ゴールドスタンダードである手袋の交換と比較すると効果は劣ったが、試験参加者が通常行っている対応と比較すると大幅に汚染を減少させた。米国・メリーランド大学のKerri A. Thom氏らによるInfection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2023年11月23日号の報告。
著者らは、成人および小児の外科、中間治療、救急治療ユニットを有する4つの病院の医療従事者を対象に、混合研究法を用いた多施設共同無作為化比較試験を実施した。参加者は介入群(WHO推奨の5つの手指衛生タイミングで、手袋の上からアルコール消毒し、手をこする)、ゴールドスタンダード(GS)群(WHO推奨の5つの手指衛生タイミングで、手袋を外し、手指衛生を実施し、新しい手袋を着用する)、通常対応群(参加者が通常行っているとおりに手指衛生・手袋の交換を行う)の3群に無作為に割り付けられ、総コロニー数および病原性細菌の有無を評価。GS群と介入群および通常対応群と介入群が比較された。
主な結果は以下のとおり。
・GS群と介入群を比較した結果、手袋をはめた状態の手に細菌が確認されたのはGS群では641回中432回(67.4%)、介入群では662回中548回(82.8%)であった(p<0.001)。
・総コロニー数中央値はGS群では2CFU(四分位範囲[IQR]:0~5)、介入群では4CFU(IQR:1~15)であった(p<0.001)。
・病原性細菌はGS群3.9%、介入群7.3%で同定された(p<0.01)。
・患者のケア再開までに要する時間は、GS群では平均28.7秒、介入群では平均14秒であった(p<0.001)。
・通常対応群と介入群を比較した結果、手袋をはめた状態の手に細菌が確認されたのは通常対応群では135回中133回(98.5%)、介入群では226回中173回(76.6%)であった(p<0.001)。
・総コロニー数中央値は通常対応群では29CFU(IQR:10.5~105.5)、介入群では2CFU(IQR:1~14.75)であった(p<0.001)。
・病原性細菌は通常対応群28.1%、介入群7.1%で同定された(p<0.001)。
・通常対応群において、WHO推奨の5つの手指衛生タイミングは537回記録されたが、そのうち手指衛生あるいは手袋の交換の実施が確認されたのは26回(4.8%)だった。そのうち遵守率が高かったのは「体液に曝露された可能性のある場合」で、低かったのは「患者周辺の環境や物品に触れた後」および「患者に触れる前」であった。
・テストされた331個の手袋のうち、6個(1.8%)に微細な穴があることが判明し、これらはすべて介入群で特定された。
著者らは、ゴールドスタンダード遵守の実現可能性の低さを考慮すると、WHOや疾病予防管理センター(CDC)は、1人の患者のケア中においては手袋をしたままのアルコール擦式消毒を推奨することも検討すべきではないかとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)