ヒト精巣上体タンパク4(HE4)は、卵巣がんの腫瘍マーカーとして広く使用され、2022年には経過観察でも保険適用となっている。アボットジャパンは2024年1月、国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科の加藤 友康氏と宇野 雅哉氏を招き、HE4の卵巣がん経過観察に関する会見を行った。
卵巣がんは自覚症状に乏しく、進行した状態で見つかることが多い。いったん切除しても再発すると治療困難となるため、経過観察が重要である。経過観察は画像診断が主体だが、放射線被ばくやコスト面から頻回実施は困難である。そのため、定期的に腫瘍マーカーで上昇を確認したうえで、画像診断を行うことが望まれている。
腫瘍マーカーとしては、CA125が広く用いられている。しかし、CA125は月経、婦人科良性疾患(子宮内膜症、筋腫)や胸腹膜の炎症性疾患などの影響を受けてしまう。一方、HE4は上記病態や疾患の影響を受けにくいとされ、高精度の腫瘍マーカーとして、卵巣腫瘍の鑑別への活用が期待されている。
そこで、卵巣がん経過観察へのHE4の使用可能性を評価するため、宇野氏らは2014~21年の卵巣がん新規診断患者48例を対象に後方視的観察研究を行った1)。その結果、経過観察中における、HE4の高い感度と陰性的中率、CA125に匹敵する画像診断との一致率が示された(感度:CA125 85.2%、HE4 77.8%、陰性的中率:CA125 82.6%、HE4 75.0%、画像診断との一致率:CA125 87.5%、HE4 81.3%)。さらに、CA125とHE4を併用することで、さらに高い感度(92.6%)が得られた。一方、HE4には早期に再発を確認できる特性が認められ、HE4使用症例の78%が画像診断より前あるいは同時に数値が上昇していた。
加藤氏と宇野氏は、「HE4はCA125との相関性が低く、CA125に対して相補的な役割も果たす。両マーカーの測定による卵巣がんの経過観察への有用性が期待される」と結んだ。
(ケアネット 細田 雅之)