日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17日~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場に開催された。
今回の学術集会は「『糖尿病』のない世界を目指して〜糖尿病学の挑戦〜」をテーマに、46のシンポジウム、169の口演、ポスターセッションなどが開催され、特筆すべきは糖尿病患者の参加プログラムやこれからの医療を担う高校生向けの参加プログラムなども開催された。
本稿では「口演118 薬物療法」から「当院におけるイメグリミンの有効性・安全性の検討」(演者:吉田 薫氏[名鉄病院内分泌・代謝内科])をお届けする。
イメグリミンはHbA1cを低下させ、脂質、肝機能を改善する可能性
イメグリミン(商品名:ツイミーグ)は、ミトコンドリアへの作用を介し、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制および糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すことで、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用を有する可能性が示唆されている治療薬で、β細胞の生存と機能を保護する効果も期待されている。わが国では、2021年6月23日に製造販売承認、同年8月12日に薬価収載、同年9月16日に発売されている。
吉田氏らの研究グループは、リアルワールドでのイメグリミンの有効性と安全性の検討を行うとともに、患者の体組成分析の検討も行った。
対象・方法として、2022年9月より2型糖尿病患者のイメグリミンへの切り替え、追加投与を行い、6ヵ月以上観察可能の75例(男性55例/女性20例)について投与前後の各種臨床指標および体組成推移を比較検討した。患者背景としては、平均年齢62.6歳、平均HbA1c8.8%、平均病歴12年、平均BMIは26で、併用薬ではメトホルミン、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の順で多く、インスリンは28%の患者で使用していた。
主な結果は以下のとおり。
・HbA1cは8.9±1.5%から8.0±1.1%へ低下、グリコアルブミン(GA)は21.1±6.2%から19.5±4.5%に有意に改善した。
・GA/HbA1cには変化がなかった。
・脂質、肝機能(AST、ALTともに)は改善傾向がみられたが、血圧、腎機能には変化がなかった。
・FIB-4 indexに変化はなかった。
・体重は71.5±15.2kgから67.3±14.4kgへと減少した。
・体組成分析において、体水分量は減少したが体蛋白量は変化がなかった。
・脂肪量、筋肉量に有意な変化はなかった。
・安全性では6例に消化器症状があり中止となったが、特筆すべき事象はなかった。
以上から吉田氏らのグループは「イメグリミンは体重を増加させることなく、血糖コントロールを改善し、脂肪肝を改善する可能性がある。また、体重を減らすことなくHbA1cを改善する可能性が示唆される」と考察している。
(ケアネット 稲川 進)