初発統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤と経口剤抗精神病薬の有用性〜メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2024/06/28

 

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、慢性期統合失調症患者の再発および入院の予防に対し、経口抗精神病薬(OAP)よりも優れていることが示唆されているが、初発や最近発症した統合失調症、つまり早期段階の統合失調症患者におけるエビデンスは、明確ではない。イタリア・ヴェローナ大学のGiovanni Vita氏らは、早期段階の統合失調症患者の維持療法におけるLAIとOAP治療による中長期の相対的な有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2024年6月2日号の報告。

 早期段階の統合失調症の維持療法におけるLAIとOAP治療を比較した直接比較ランダム化比較試験(RCT)を、主要な電子データベースより検索し、ペアワイズランダム効果メタアナリシスを実施した。研究のエンドポイントで測定された再発/入院および忍容性(すべての原因による治療中止)を共通の主要アウトカムとし、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。サブグループ解析では、LAIとOAP治療間の有効性および忍容性の差を緩和する因子の特定を試みた。

 主な結果は以下のとおり。

・直接比較RCT 11件(2,374例、年齢中央値:25.2歳、男性の割合:68.4%、罹病期間中央値:45.8週間)が特定された。
・13〜104週間(中央値:78週間)にわたり、LAIとOAP治療との間で、再発/入院予防(RR=0.79、95%CI:0.58〜1.06、p=0.13)、忍容性(RR=0.92、95%CI:0.80〜1.05、p=0.20)に有意な差は認められなかった。
・対象試験の方法論および患者集団に関しては、非常に異質であった。
・安定した患者(RR=0.65、95%CI:0.45〜0.92)、実用的な試験デザイン(RR=0.67、95%CI:0.54〜0.82)、厳格なITTアプローチ(RR=0.64、95%CI:0.52〜0.80)の研究において、LAIは再発/入院の予防に対しOAPよりも優れた結果が認められた。
・LAIは、統合失調症患者のみを対象(RR=0.87、95%CI:0.79〜0.95)、罹病期間が長い(RR=0.88、95%CI:0.80〜0.97)、不安定な患者(RR=0.89、95%CI:0.81〜0.99)、LAIの補充療法としてのOAP使用可能(RR=0.90、95%CI:0.81〜0.99)とした研究において、忍容性の向上が認められた。

 著者らは、「全体としてLAIとOAP治療は、初発統合失調症患者の再発/入院の予防や忍容性の関して有意な差が認められなかったが、サブグループ解析では、いくつかの場合において、LAIはOAPよりも優れていることが示されており、OAPがLAIよりも優れている点は見当たらなかった。初発統合失調症患者におけるLAIとOAPの違いをさらに明らかとするためにも、より質の高い実用的な研究が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)