境界性パーソナリティ障害、思春期〜成人期の経過

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/20

 

 境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療において、思春期以降の中長期にわたる臨床的および機能的経過に関する研究は、不十分である。デンマーク・Mental Health ServicesのMie Sedoc Jorgensen氏らは、思春期BPD患者における診断から5年後の精神病理学的および機能的状態についての検討を行った。Comprehensive Psychiatry誌2024年7月号の報告。

 対象は、思春期BPDに対するメンタライゼーション・ベースド・セラピーによるグループ介入と通常治療を比較したランダム化臨床試験(RCT)に登録された患者。5年後のフォローアップ調査時に、Schedules for Clinical Assessment in Neuropsychiatry(Scan)およびStructured Clinical Interview for DSM-5 Personality Disorders(SCID-5-PD)を含む半構造化面接評価を行った。自己報告ツールを用いて、注意欠如多動症(ADHD)、アルコール、薬物、タバコの使用、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、複雑性PTSD、一般機能の評価を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・最初のRCT対象患者111例中97例(87%)が本研究に参加した。
・年齢範囲は、19〜23歳であった。
・最も多くみられた疾患は、ADHD(59%)、さまざまな人格障害(47%)であり、そのうち半数はBPD(24%)、不安症(37%)、うつ病(32%)、PTSDまたは複雑性PTSD(20%)、統合失調症(16%)、摂食障害(13%)の基準を満たしていた。
・精神疾患の基準を満たさなかった患者は、わずかに16%であった。
・フォローアップ調査時点で、心理療法およびまたは精神薬理学的治療を行っていた患者は、約半数であった。
・一般的な機能は、依然損なわれたままであり、ニート状態は36%でみられた。これは、一般集団の同年齢層のニート率の約4倍であった。

 著者らは「BPD診断の安定性は中程度ではあるが、思春期にBPD診断基準を満たしていた患者は、5年間のフォローアップ調査において、広範なアウトカム不良を示していた。BPDは、思春期の一般的な不適応の指標となるが、成人期への移行よる重篤な問題発生の前兆であるとも考えられる。思春期BPD患者に対する早期介入プログラムは、現在のBPDだけでなく、幅広い機能的および精神病理学的アウトカム、とくに将来の社会的および職業的サポートに焦点を当てる必要がある」としている。

(鷹野 敦夫)