うつ病および不安症の発症率について、子宮内・周産期・幼児期の発達段階における5つの人生早期の因子(母乳育児、出産前後の母親の喫煙、出生体重、多児出産、養子縁組)との長期的な関連性を明らかにするため、中国・Medical College of Soochow UniversityのRuirui Wang氏らが40~69歳の成人を対象に調査を行った。Translational Psychiatry誌2024年7月20日号の報告。
UK Biobankのデータを用いて、2006~10年に40~69歳の50万2,394例を募集した。ベースライン時にタッチスクリーンアンケートまたは口頭でのインタビューを通じて、参加者より幼少期の情報を収集した。主要アウトカムは、うつ病および不安症の発症とした(ICD-10に従って定義)。各因子のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中央値13.6年の間に、うつ病の発症は1万6,502例(3.55%)、不安症の発症は1万5,507例(3.33%)であった。
・潜在的な交絡因子で調整後、5つの人生早期の因子はうつ病リスクの有意な増加と関連していることが示唆された。
【非母乳育児】HR:1.08、95%CI:1.04~1.13
【出産前後の母親の喫煙】HR:1.19、95%CI:1.14~1.23
【多胎児】HR:1.16、95%CI:1.05~1.27
【低出生体重】HR:1.14、95%CI:1.07~1.22
【養子】HR:1.42、95%CI:1.28~1.58
・不安症リスクの増加も5つの人生早期の因子と関連が認められた。
【非母乳育児】HR:1.09、95%CI:1.04~1.13
【出産前後の母親の喫煙】HR:1.11、95%CI:1.07~1.16
【多胎児】HR:1.05、95%CI:0.95~1.17
【低出生体重】HR:1.12、95%CI:1.05~1.20
【養子】HR:1.25、95%CI:1.10~1.41
・用量反応関係も観察され、人生早期のリスク因子の数が増えると、うつ病および不安症のリスクが高まる可能性が示唆された。
著者らは、「5つの人生早期の因子は、それぞれが成人期のうつ病および不安症発症に対する独立したリスク因子であると考えられる」とし、「これら人生早期の因子を考慮することは、その後の人生のメンタルヘルスに対する感受性を理解するうえで不可欠である」とまとめている。
(鷹野 敦夫)