EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のlazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」で報告されている1)。EGFR-TKIに対する耐性変異の主なものは、EGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅であるが、amivantamab+lazertinibの耐性変異に関する詳細は明らかになっていなかった。そこで、MARIPOSA試験におけるamivantamab+lazertinibの耐性変異に関する解析が実施された。フランス・パリ・サクレー大学のBenjamin Besse氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で本結果を発表した。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者
・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例
・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例
・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)
[副次評価項目]全生存期間など
今回は、ami+laz群とosi群の試験治療終了となった患者を対象として、耐性変異の発現率を比較した結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。
・試験治療終了時の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が得られたのは、ami+laz群119例、osi群155例であり、それぞれ113例、140例が対象となった。
・EGFR遺伝子変異(C795S、L718X、G724X)による耐性獲得は、ami+laz群0.9%、osi群7.9%に認められ、MET遺伝子増幅による耐性獲得は、それぞれ4.4%、13.6%に認められた。いずれもami+laz群で有意に少なかった(それぞれp=0.014、0.017)
・その他の耐性獲得変異の発現率は以下のとおりであった(ami+laz群、osi群の順に記載)。
HER2遺伝子増幅:7.1% vs.3.6%
RAS/RAF遺伝子変異:9.7% vs.12.1%
PI3K遺伝子変異:8.0% vs.8.6%
細胞周期関連遺伝子変異※1:13.3% vs.8.6%
TP53/RB1遺伝子異常(欠失変異)※2:0.9% vs.2.9%
※1:CCNE1、CDKN2A、CDK4、CDK6、CCND2遺伝子
※2:小細胞肺がん(SCLC)への形質転換と関連があるとされる遺伝子変異
・2つ以上の耐性メカニズムに関する遺伝子変異は、ami+laz群27.8%、osi群42.6%にみられた。
Besse氏は、本結果について「ctDNAの解析において、amivantamab+lazertinib併用療法はEGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅による耐性獲得を減少させ、その他の耐性獲得変異の有意な増加はみられないことが示された。amivantamab+lazertinib併用療法は、SCLCへの形質転換と関連するTP53/RB1遺伝子異常(欠失変異)の発現率が低く、2つ以上の耐性メカニズムに関する遺伝子変異も少ない傾向にあった」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)