成人うつ病に対する第1選択介入は、抗うつ薬治療と対人関係療法であるが、長期的および抑うつ症状以外に対するアウトカムにおける相対的な有効性は、不明である。個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析は、従来のメタ解析よりも、より正確な効果推定値を算出可能である。米国・アリゾナ大学のZachary D. Cohen氏らは、対人関係療法と抗うつ薬治療における治療後およびフォローアップ期間中のさまざまなアウトカムを比較するため、IPDメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月4日号の報告。
2023年5月1日にシステマティックな文献検索を行い、成人うつ病患者を対象に対人関係療法と抗うつ薬治療を比較したランダム化試験を特定した。匿名化されたIPDをリクエストし、混合効果モデルを用いて分析した。事前に指定した主要アウトカムは、治療後の抑うつ症状の重症度とした。副次的アウトカムは、2つ以上の研究で評価された治療後およびフォローアップ期間中の指標とした。
主な結果は以下のとおり。
・特定された15件の研究のうち、9件よりIPDが収集された(1,948例中1,536例、78.9%)。
・治療後の抑うつ症状(d=0.088、p=0.103、1,530例)および社会的機能(d=0.026、p=0.624、1,213例)の指標では、有意な差が認められなかった。
・より小規模なサンプルでは、抗うつ薬治療は、対人関係療法よりも、治療後の一般精神病理(d=0.276、p=0.023、307例)、機能不全(d=0.249、p=0.029、231例)の指標で、わずかに優れていたが、その他の副次的およびフォローアップ期間中のアウトカムでは、違いが認められなかった。
著者らは「対人関係療法と抗うつ薬治療の急性期および長期的な有効性を幅広く評価した初めてのメタ解析である本試験において、対人関係療法と抗うつ薬治療との間に有意な差は認められなかった」と報告し「うつ病治療に関する試験では、複数のアウトカム測定およびフォローアップ評価を含める必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)