抗精神病薬の多剤併用は50年間でどのように変化したのか

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/27

 

 抗精神病薬の多剤併用は、有害事象リスクが高く、単剤療法と比較し、有効性に関するエビデンスが少ないにもかかわらず、臨床的に広く用いられている。南デンマーク大学のMikkel Hojlund氏らは、精神疾患患者における抗精神病薬の多剤併用率、傾向、相関関係を包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年12月号の報告。

 対象研究は、年齢や診断とは無関係に、精神疾患または抗精神病薬を使用している患者における抗精神病薬の多剤併用率を報告したオリジナル研究(観察研究および介入研究)。2009年1月〜2024年4月までに公表された研究をMEDLINE、Embaseより検索した。2009年5月以前の関連研究は、抗精神病薬の多剤併用率に関するこれまでの2つのシステマティックレビューより特定した。プールされた抗精神病薬の多剤併用率は、ランダム効果メタ解析を用いて推定した。抗精神病薬の多剤併用に関連する相関関係の特定には、サブグループ解析および混合効果メタ回帰解析を用いた。実体験を有する人は、本プロジェクトには関与しなかった。

 主な結果は以下のとおり。

・研究517件(個別時点:599件)、445万9,149例(平均年齢:39.5歳、範囲:6.4〜86.3歳、性別や民族に関するデータはまれ)をメタ解析に含めた。
・ほとんどの研究には、統合失調症スペクトラム症患者が含まれていた(270件、52%)。
・全体として、抗精神病薬の多剤併用率は24.8%(95%信頼区間[CI]:22.9〜26.7)、統合失調症スペクトラム症患者では33.2%(95%CI:30.6〜36.0)、認知症患者では5.2%(95%CI:4.0〜6.8)であった。
・抗精神病薬の多剤併用率は、地域により異なり、北米では15.4%(95%CI:12.9〜18.2)、アフリカでは38.6%(95%CI:27.7〜50.6)であった。
・全体的な抗精神病薬の多剤併用率は、1970年から2023年にかけて有意な増加が認められた(β=0.019、95%CI:0.009〜0.029、p=0.0002)。また、成人患者は小児および青年患者よりも高く(27.4%[95%CI:25.2〜29.8]vs.7.0%[95%CI:4.7〜10.3]、p<0.0001)、入院患者は外来患者よりも高かった(31.4%[95%CI:27.9〜35.2]vs.19.9%[95%CI:16.8〜23.3]、p<0.0001)。
・抗精神病薬の多剤併用は、単剤療法と比較し、次のリスク増加が認められた。
【再発】相対リスク(RR):1.42、95%CI:1.04〜1.93、p=0.028
【精神科入院】RR:1.24、95%CI:1.12〜1.38、p<0.0001
【全般的機能低下】標準化平均差(SMD):−0.31、95%CI:−0.44〜−0.19、p<0.0001
【錐体外路症状】RR:1.63、95%CI:1.13〜2.36、p=0.0098
【ジストニア】RR:5.91、95%CI:1.20〜29.17、p=0.029
【抗コリン薬使用などの有害事象の増加】RR:1.91、95%CI:1.55〜2.35、p<0.0001
【副作用スコアの高さ】SMD:0.33、95%CI:0.24〜0.42、p<0.0001
【補正QT間隔延長】SMD:0.24、95%CI:0.23〜0.26、p<0.0001
【全死亡率】RR:1.19、95%CI:1.00〜1.41、p=0.047

 著者らは「過去50年間で、抗精神病薬の多剤併用率は世界的の増加がみられ、その傾向は統合失調症スペクトラム症患者でとくに高かった。抗精神病薬の多剤併用は、単剤療法よりも、疾患重症度が高く臨床アウトカム不良と関連しているが、これらの問題を解決するものではない。さらに、抗精神病薬の多剤併用は、全死亡率を含む副作用の増加と関連していることが示された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)