自閉スペクトラム症の世界的状況、20歳未満の健康負担のトップ10にランク

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/01/28

 

 自閉スペクトラム症(ASD)の疫学や健康ニーズに関する高品質の推定は、サービス計画者やリソース配分者にとって必要である。米国・Global Burden of Disease Study 2021 Autism Spectrum Collaboratorsは、疫学データと負担推定方法改善後の世界疾病負担研究(GBD)2021より、ASDの世界的な有病率および健康負担を報告した。The Lancet Psychiatry誌オンライン版2024年12月19日号の報告。

 GBD 2021では、PubMed、Embase、PsycINFO、Global Health Data Exchangeより検索し、専門家との協議を含むシステマティック文献レビューにより、ASDの疫学に関するデータを特定した。適格データより有病率を推定するため、ベイズメタ回帰ツール(DisMod-MR 2.1)を用いた。モデル化された有病率および障害の重み付けを用いて、致死的でない健康負担(障害生存年数[YLD])および全体的な健康負担(障害調整生存年数[DALY])を推定した。民族別のデータは入手できなかった。本研究のデザイン、準備、解釈、執筆には、ASDの経験を有する人が関わった。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年のASD推定患者数は、世界で6,180万人(95%不確実性区間:52.1〜72.2)、127人に1人であると推定された。
・世界の年齢標準化有病率は、全体で10万人当たり788.3人(663.8〜927.2)、男性で10万人当たり1,064.7人(898.5〜1,245.7)、女性で10万人当たり508.1人(424.6〜604.3)。
・ASDのDALY率は、1,150万DALY(7.8〜16.3)を占め、世界で10万人(年齢標準化)当たり147.6DALY(100.2〜208.2)相当であった。
・地域レベルでの年齢標準化DALY率は、東南アジア、東アジア、オセアニアの10万人当たり126.5(86.0〜178.0)から高所得地域の204.1(140.7〜284.7)の範囲であった。
・DALYは生涯を通じて明らかであり、5歳未満でみられ、年齢の増加に伴い減少した。
【5歳未満】10万人当たり169.2DALY(115.0〜237.4)
【20歳未満】10万人当たり163.4DALY(110.6〜229.8)
【20歳以上】10万人当たり137.7DALY(93.9〜194.5)
・ASDは、20歳未満の致死的でない健康負担のトップ10にランク付けされた。

 著者らは「20歳未満におけるASDの有病率および致死的でない健康負担の高さは、世界におけるASDの早期発見および支援の重要性を強調している。地理的変動をより正確に把握できるよう、疫学データのカバー範囲をより広範囲にすることから始める必要がある。本結果は、今後の研究活動やASD患者のニーズにより適切に対応する医療サービスの決定指針に役立つ可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)