2023年にがんと心血管疾患のそれぞれに対する疾病対策計画が公表され、その基本計画の一環として、循環器内科医とがん治療医の連携が推奨された。しかし、当時の連携状態については明らかにされていなかったため、新潟県内の状況を把握するため、新潟県立がんセンター新潟病院の大倉 裕二氏らは「免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎(ICIAM)についての全県アンケート調査」を実施。その結果、ICIAMではアントラサイクリン関連心筋症(ARCM)と比較し、循環器内科医とがん治療医の双方の経験や組織的な対策が少なく、部門間連携の脆弱性が高いことが明らかとなった。Circulation Report誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。
本研究は新潟大学循環器内科と新潟腫瘍循環器協議会(OCAN2020)が、ICIAMとARCMに関する質問票を県内すべての循環器内科医とその病院の指導的ながん治療医に配布し行われた。
主な結果は以下のとおり。
・アンケートには、病院29施設の循環器内科医124人と指導的立場にあるがん治療医41人が回答した。
・ICIAMの臨床経験があると報告した循環器内科医は31.8%、指導的立場にあるがん治療医は24.4%で、ARCMの経験(循環器内科医の80.0%[p<0.001]、指導的立場にあるがん治療医の58.5%[p=0.009])よりも有意に低かった。
・21年以上の勤務歴のあるベテランの循環器内科医は20年以下の循環器内科医と比較してICIAMの経験が少なかった(18.6%vs.38.5%、p=0.018)。
・免疫療法を実施している20施設のうち、12施設(60%)では循環器内科医と指導的立場にあるがん治療医の間で「相談なし」と回答し、5施設(25%)では「ICIAM 発症後に相談した」と回答の一致を認めた。一方、ARCM発症前または発症後の部門間相談について、「相談なし」と回答したのは回答したのは4施設(20%)のみで、12施設(60%)で「ARCM発症後に相談した」と回答の一致を認めた。
本結果を踏まえ、大倉氏らはICIAM診療における5つのギャップを次のように示しており、
(1)循環器内科医とがん治療医の経験のギャップ
(2)循環器内科医とがん治療医の知識のギャップ
(3)循環器内科医の若手とベテランの世代間ギャップ
(4)循環器内科とがん診療科の部門間ギャップ
(5)連携体制の病院間のギャップ
「病院では循環器内科医とがん治療医の連携を促進させる必要がある」としている。
(ケアネット 土井 舞子)