認知症の行動・心理症状(BPSD)は、急性期病院における治療を複雑にする可能性があり、このようなケースにおけるBPSDに関するエビデンスは多様である。タイ・Prince of Songkla UniversityのKanthee Anantapong氏らは、急性期病院におけるBPSDの有病率を特定し、関連するリスク因子、治療法、アウトカムを評価した。Age and Ageing誌2025年1月6日号の報告。
2024年 3月5日までに公表された急性期病院入院中の認知症高齢者におけるBPSDの有病率に関する研究をCochrane Library、MEDLINE、PsycINFOより検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。研究のスクリーニング、選択、データ抽出には、独立した二重レビュープロセスを用いた。12項目のBPSDに関するデータは、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)およびアルツハイマー病行動病理学尺度(BEHAVE-AD)に基づき抽出した。リスク因子、治療、アウトカムをレビューした。メタ解析を用いて、結果を統合した。
主な結果は以下のとおり。
・1万5,101件中30件(23研究)を分析に含めた。
・ほとんどの研究の品質は、中程度(12件)〜低(17件)であった。
・メタ解析では、急性期病院入院中の認知症高齢者における全体的なBPSDのプールされた有病率(BPSD症状が1つ以上)は60%(95%信頼区間:43〜78)であった(11研究)。
・サブグループ解析では、評価ツールに基づくBPSDの有病率のばらつきが示唆された(BEHAVE-AD:85%、NPI:74%、その他:40%)。
・一般的なBPSD症状として、攻撃性/興奮(39%)、睡眠障害(38%)、摂食障害(36%)、易怒性(32%)がみられた。
・BPSDは、せん妄、痛み、不快な介入、向精神薬使用、介護者のストレスの増加との関連が認められた。
・患者とスタッフのやり取りが不十分で、退院計画が断片化しているため、緊急入院や再入院の発生率が高かった。
著者らは「急性期病院でのBPSDマネジメントのためのカスタマイズされたアプローチの実施、スタッフトレーニングの強化、介護者とのコミュニケーション改善、統合された退院計画の策定が、現在の医療システムに求められる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)