既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibの有用性(Beamion LUNG-1)/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/17

 

 HER2遺伝子変異はNSCLC患者の約2~4%に認められ、脳転移が生じることが多く、予後不良の場合が多い。zongertinibはHER2チロシンキナーゼドメイン選択的に共有結合し、不可逆的にHER2を阻害するチロシンキナーゼ阻害薬である。野生型のEGFRへの結合は非常に弱く、EGFR関連有害事象が抑制されることが期待されている。そこで、zongertinibの用量探索および安全性・有効性を検討する国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」が実施された。第Ib相の既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性コホートにおける結果が、世界肺がん学会(WCLC2024)で報告されており、WCLC2024の報告では、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けた患者の66.7%に奏効が認められ、忍容性も高かったことが示された。その後、本試験のアップデート解析が実施され、その結果を葉 清隆氏(国立がん研究センター東病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で報告した(本解析結果は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会[ESMO Asia2024]でも報告されている)。

 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ia相の結果から1日1回120mg、240mgの用量が選択された。今回は、第Ib相においてプラチナ併用化学療法による治療歴のある(抗体薬物複合体による治療歴を有する患者は除外)HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート1)の結果が報告された。コホート1では、zongertinibを 1日1回120mg投与する群(120mg群)、240mg投与する群(240mg群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中間解析により1日1回120mgの用量が選択され、中間解析以降の組み入れ患者には、1日1回120mgの用量で投与した。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効割合(ORR)とし、副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)とした(いずれも中央判定)。

 今回は120mg群の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時点(2024年8月29日)において、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けたのは75例であり、年齢中央値は62歳(範囲:30~80)、女性の割合は68%、アジア人の割合は53%であった。前治療ライン数1/2/3以上の割合は56%/16%/28%であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合は37%であった。
・主な治療関連有害事象(TRAE)は下痢(51%)、皮疹(27%)、AST増加(21%)、ALT増加(20%)であり、多くがGrade1~2であった。死亡に至ったTRAEは認められず、間質性肺疾患(ILD)の発現もなかった。減量に至った有害事象(AE)の発現割合は5%、治療中止に至ったAEの発現割合は3%と低かった。
・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは71%であり(期待値30%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。DCRは93%であった。
・奏効が認められた患者(53例)のうち、データカットオフ時点で55%がzongertinibによる治療を継続していた。
・6ヵ月PFS率は69%、6ヵ月DOR率は73%であった。

 本結果について、葉氏は「zongertinibは、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLC患者において、良好な抗腫瘍活性を示した。PFSやDORのデータから、zongertinibは持続的な効果を示すことが示唆された」とまとめた。HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療として、zongertinibと標準治療を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が実施されており、現在患者を組み入れ中である。なお、zongertinibは米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定およびブレークスルーセラピー指定を受けている。

(ケアネット 佐藤 亮)