看護師からの電話が心不全患者の延命につながる?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/03/09

 

 高血圧や腎不全などの併存疾患による負荷の高い心不全患者の退院後の生存率が、看護師からの電話により改善する可能性が新たな研究で示された。研究論文の上席著者である、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のIlan Kedan氏は、「心不全患者を遠隔で管理する方法には、多くの最新テクノロジーやアイデアがある。しかしわれわれの研究では、昔ながらのローテクな電話で患者の状態を尋ねることにより、転帰が改善する可能性が示された」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of Cardiac Failure」に12月12日掲載された。

 心不全は、心臓のポンプ機能の低下により全身が必要とする量の血液を十分に送り出せなくなった状態を指す。研究グループによると、心不全により入院した患者の15〜20%は退院後30日以内に再入院が必要になるという。

 Kedan氏らは今回、看護師からの電話が退院後の心不全患者の転帰に及ぼす影響をランダム化比較試験で検討した。対象は、2011年10月12日から2013年9月30日の間に慢性心不全が急性増悪して米カリフォルニア州の6カ所の大学病院に入院した、50歳以上の患者1,313人(平均年齢73.2±12.2歳、男性53.9%)。これらの患者は平均5.7個の併存疾患を持っていた。

 対象者は、体重、血圧、心拍数、症状の遠隔モニタリングと看護師からの定期的な電話を受ける群(介入群)と、通常のケアを受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。介入群が180日にわたる試験期間中に受けた電話の回数は平均5回だった。対象者はさらに、併存疾患による負荷に応じて、低度(併存疾患が0〜2個、98人)、中等度(同3〜8個。1,059人)、高度(同9個以上、156人)の3群に分類された。

 その結果、併存疾患による負荷が「高度」に分類された患者の死亡リスクは、対照群よりも介入群の方が有意に低く、退院後30日時点の死亡率は、介入群3.8%、対照群14.8%(ハザード比0.25、95%信頼区間0.07〜0.90)、退院後180日時点での死亡率は、介入群18.2%、対照群32.5%(同0.51、95%信頼区間0.27〜0.98)であった。また、介入群の方が、生存日数(160.1日対140.3日、P=0.029)と院外生存日数(152.0日対133.2日、P=0.044)も有意に長かった。これに対して、併存疾患による負荷が「低度」または「中等度」に分類された患者では、介入群と対照群の間で転帰に有意差は認められず、再入院率は同程度であった。

 Kedan氏は、「この研究は、併存疾患の数に応じて患者を分類するという方法を用いた点で、他に類を見ないものだ。同様の手法を用いて、心不全に対する介入により最もベネフィットを得ることができる患者の特定を試みようと考える研究も今後現れるのではないか」とシダーズ・サイナイのニュースリリースで語っている。

 研究グループはさらに、「電話を用いたこの介入方法は、スマートフォンのアプリやコンピューターベースのプログラムの使用に困難を感じる人にとって、現実的な解決策になるのではないか」との見方を示している。

[2023年2月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら