呼吸器疾患のCTスキャンでも心臓リスクの評価が可能

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/04/19

 

 大きな手術の前に、リスクを判定するための特殊な心臓スキャンを行う必要はない可能性のあることが、新たな研究で示唆された。肺炎やがんなどの肺の疾患をスクリーニングするために数カ月前に撮影された既存の胸部画像を見直すことでも、手術時の心筋梗塞や死亡のリスクを推定できる可能性があるという。米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのDaniel Choi氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会年次総会(ACC.23、3月4〜6日、米ニューオーリンズ)で発表されるとともに、要旨が「Journal of the American College of Cardiology」3月号(増刊号)に掲載された。

 この研究ではまず、2016年1月から2020年9月までの間に、NYUランゴン・ヘルス病院で心臓には無関係の外科手術を受けた45歳以上の患者2,560人の医療記録データの評価を行った。データには手術の種類のほか、死亡や心筋梗塞の事例に関する情報が含まれていた。対象患者は全て、手術に先立つ1年以内に胸部CTスキャンを受けていた。Choi氏らは、患者の中から入院中に死亡または心筋梗塞〔これらを以下、主要有害心血管イベント(MACE)とする〕を来した患者を特定した。

 次に、CT読影の正式なトレーニングを受けたことがない研究グループのメンバー4人に90分のトレーニングを行って、CT画像から冠動脈の石灰化の重症度を推測する方法を教えた。その方法は、心臓の主要な3本の冠動脈のそれぞれに沈着したプラーク(動脈硬化巣)のレベルを「なし(0点)」から「重度(3点)」までで評価し、その合計(0〜9点)を算出するというものだった。

 その結果、MACEの発生リスクは、プラーク沈着のスコアが0〜2点の患者で3.6%、3〜6点の患者で9.5%、7〜9点の患者で10.8%であり、スコアが高いほどMACEの発生リスクも上昇することが明らかになった。

 Choi氏は、「この結果から、既存の画像は、手術リスクを評価するために撮像されたものほど精密ではないにしても、リスクに関して実用的な判断をする上で医師に有用なことが判明した」と述べている。

 研究グループの1人であるNYUグロスマン医学部内科・放射線学分野のRobert Donnino氏は、「われわれが用いた冠動脈石灰化の評価方法は簡便で、トレーニングも最小限で済むため、あらゆる医療現場で使うことができる費用対効果の高いツールとなり得る」と述べている。また研究グループは、この評価法を用いることで手術の遅れや費用の増大を回避できるとともに、放射線被曝も低減できる可能性があるとしている。

 一方、同じく研究グループの1人であるNYUグロスマン医学部内科学分野のNathaniel Smilowitz氏は、「術前の心臓リスク評価は有用だが、術後の有害事象を予防し、生存率を向上させるための新たな戦略を見つけることが重要だ」と指摘している。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2023年3月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら