電子タバコでのメンソールフレーバーのリキッドの使用は、それ以外のリキッドを使用した場合よりも多くの微小粒子を肺に届け、肺機能にダメージを与える可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米ピッツバーグ大学医学部呼吸器・アレルギー・クリティカル医学分野のKambez Benam氏らによる研究で、「Respiratory Research」に4月11日掲載された。
電子タバコの蒸気が、肺の炎症や酸化ストレス、DNA損傷、喘息を誘発する気道過敏性を引き起こす可能性があることは、多くの研究で示唆されている。大麻の精神活性成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含む電子タバコ用リキッドにはビタミンEアセテートが添加されていることが多いが、Benam氏らは過去の研究で、ビタミンEアセテートの添加により、より多くの有害な微小粒子が肺の抹消気道、気管や気管支壁の内層にとどまる可能性のあることを報告している。
Benam氏らは今回、メンソールの潜在的な危険性を調べるために、人間の呼吸パターンを再現したロボットシステム「Human Vaping Mimetic Real-Time Particle Analyzer(HUMITIPAA)」を使用して、電子タバコから発生したエアロゾルに含まれている微小粒子の大きさや数をリアルタイムで測定した。
その結果、メンソールフレーバーのリキッドを使用すると、非メンソール系のリキッドを使用した場合よりも多くの微小粒子が放出されることが明らかになった。また、電子タバコの喫煙者の患者記録を分析したところ、メンソールフレーバーのリキッド使用者の方が非使用者に比べて、年齢、性別、人種、喫煙量(パックイヤー)、ニコチンやカンナビス(大麻)含有のリキッドの使用に関わりなく、呼吸が浅く、肺機能が低いことが分かった。
こうした結果を受けてBenam氏は、「メンソールが植物のミントに由来する成分であり、食品や飲み物に添加されることがあるからといって、それを吸い込んでも問題はないと考えるのは間違いだ」とし、「メンソールフレーバーのリキッドを使用することで、肺に到達する微小粒子の数が大幅に増加する可能性のあることが、この研究で明らかになった。電子タバコから発生するエアロゾルは、ニコチンやホルムアルデヒドなどの有害物質を多く含むことが知られている」と懸念を示す。研究グループは、電子タバコ用リキッドへのメンソールの添加はビタミンEアセテートの添加と同程度に危険な可能性があるとの見方を示している。
その一方で、メンソールを禁止する動きも進んでいる。米食品医薬品局(FDA)は2022年に、子どもが紙巻きタバコや電子タバコを吸い始めるのを阻止する目的で、紙巻きタバコでのメンソールの使用と、メンソールフレーバーのリキッドを使った2種類の電子タバコ製品の販売を禁じることを提案している。
米ノースウェル・ヘルス・タバココントロールセンターのディレクターを務めるJennifer Sidi氏は、「電子タバコは、紙巻きタバコよりも健康に害のない、紙巻きタバコの代替品と考えられているが、その考えが間違いであることを示すための研究が実施されているところだ。その結果、電子タバコには危険な化学物質がたくさん含まれており、必ずしも健康的な選択肢ではないことが明らかになりつつある」と強調する。
残念ながら、電子タバコはティーンエージャーの間で依然として人気が高い。Sidi氏は、「電子タバコが安全な選択肢でないことを示す研究結果は増える一方だ。それなのに、若く多感な年代の人々が、電子タバコを売るためのターゲットにされている」と危惧を示している。
[2023年4月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら