心血管の健康に関係のある一連の目標を守っている人は、そうでない人よりも寿命が約9年長い可能性のあることを示唆する報告が、「Circulation」に4月10日掲載された。
この研究では、米国心臓協会(AHA)が開発した「Life's Essential 8」と呼ばれる健康スコアと余命との関連が検討された。Life's Essential 8には、タバコを吸わないこと、身体的に活動的であること、健康的な食事をすること、適切な睡眠を取ること、体重を管理すること、および、血圧・血糖値・コレステロールの良好なコントロールが、推奨事項として掲げられている。以前の研究では、これらの推奨事項を遵守しており評価スコアが高い人は、スコアが低い人よりも、人生の中で慢性疾患に罹患していない期間が長いことが示されていた。そして今回の研究によって、「ライフスタイルの変更が、長生きにつながるというエビデンスが示された」と、論文の上席著者で米テュレーン大学肥満研究センター長のLu Qi氏は語っている。
Qi氏らは、2005~2018年の米国国民健康栄養調査に参加した成人2万3,003人(年齢範囲は20~79歳)を、2019年12月31日まで追跡し、Life's Essential 8の遵守状況と死亡リスクとの関連を検討した。Life's Essential 8の遵守状況は、0~100ポイントで評価し、スコア50点未満を「低い」、50~79点を「中程度」、80点以上を「高い」と分類した。
中央値7.8年の追跡で1,359人が死亡。50歳時点の平均余命は、スコアが低い群は27.3年、中程度の群は32.9年、高い群は36.2年であり、低い群と高い群との間には8.9年の差のあることが明らかになった。Life's Essential 8の推奨事項の中で、平均余命への影響力の大きい因子は、非喫煙、睡眠、身体活動、血糖管理だった。
平均余命の延長の約42%は、心血管死の減少に起因していた。ただしそれは逆に言えば、余命延長の58%近くは心血管疾患リスクの減少を介さずに生じたことを意味している。この結果について米カリフォルニア大学アーバイン校のNathan Wong氏は、「Life's Essential 8の推奨に基づく総合的な評価が重要であり、心血管の健康を維持することの好ましい影響が、心血管疾患以外での死亡リスクも抑制することを示している」と解説している。
また、Wong氏は、「この知見は、年1回の健康診断の結果やAHAの『My Life Check』(Life's Essential 8に基づく健康スコアを把握可能)をはじめとするオンラインツールの使用を通じて、人々が自分自身の心血管の健康リスクを理解する動機付けに役立つだろう。これらの評価結果を参考に、心血管の健康状態の改善に向けて、自分が何をすべきかを知ることができる」と付け加えている。
ただし同氏によると、Life's Essential 8には心血管の健康に関する多くの重要な事項が含まれているが、今後の研究では、さらに他の要因がどの程度、心血管の健康に関与しているのかを調べる必要があるとしている。「ストレスや抑うつなどの心理的因子や、ヘルスケアへのアクセスの良否などの社会的因子が、心血管疾患、あるいはその他の疾患の転帰に与える影響を考慮しなければならない。また今回の研究は死亡率に焦点を当てているが、非致死的な心血管転帰への影響の評価も求められる」とのことだ。
[2023年4月11日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.