炎症性腸疾患の患者は脳卒中リスクが高い

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/07/17

 

 炎症性腸疾患(IBD)患者は脳卒中リスクが高いことを示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のJiangwei Sun氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に6月14日掲載された。この研究結果はIBDと脳卒中との間に因果関係が存在することは示していないが、「IBD患者と医師はそのリスクを認識しておく必要がある。IBD患者の脳卒中リスク因子のスクリーニングとその管理は、緊急の臨床課題であるかもしれない」とSun氏は述べている。

 この研究の対象は、1969~2019年にスウェーデンで、生検によって診断されたIBD患者8万5,006人(クローン病2万5,257人、潰瘍性大腸炎4万7,354人、未分類のIBD1万2,395人)と、年齢、性別、居住地域が一致するIBDでない一般住民40万6,987人。平均12年追跡して、脳卒中リスクを比較検討した。

 追跡期間中の脳卒中発生件数は、IBD群では3,720件(1万人年当たり32.6)、非IBD群では1万5,599件(同27.7)だった。肥満や高血圧、心疾患などの脳卒中リスクに影響を及ぼし得る因子を調整後、IBD群は非IBD群に比べて13%ハイリスクであることが分かった〔調整ハザード比(aHR)1.13(95%信頼区間1.08~1.17)〕。

 脳卒中のタイプ別に見ると、IBD群でのリスク上昇は虚血性脳卒中でのみ認められ〔aHR1.14(同1.09~1.18)〕、出血性脳卒中のリスク差は非有意だった〔aHR1.06(0.97~1.15)〕。虚血性脳卒中のリスク上昇は全てのIBDサブタイプで認められた。調整ハザード比は以下の通り。クローン病1.19(1.10~1.29)、潰瘍性大腸炎1.09(1.04~1.16)、未分類のIBD1.22(1.08~1.37)。また、脳卒中のリスク差はIBD診断から25年経っても存在しており、Sun氏によると、「それまでの間にIBD患者93人につき1人の割合で、脳卒中イベントがより多く発生していたと計算される」という。

 この研究では、遺伝的背景の影響も考慮された。ほかの多くの疾患と同様に、IBDや脳卒中も遺伝的因子が発症リスクに関与していることが知られている。そこで、IBD群の患者のきょうだいの中で、IBDや脳卒中の既往のない10万1,082人を比較対象とする解析が行われた。その結果、IBD群はそのきょうだいと比べても、脳卒中リスクが11%高いことが明らかになった。

 以上より著者らは、「IBD患者はIBDのサブタイプにかかわりなく、脳卒中、特に虚血性脳卒中のイベントリスクが高い。リスク差はIBD診断後25年が経過しても続いていた。これらの知見は、IBDの臨床において、患者の脳卒中イベントリスクを長期間にわたって留意する必要のあることを意味している」と結論付けている。

 一方、研究の限界点としては、本研究は前述のように1969~2019年にIBDと診断された患者を対象としているが、この間にIBDや脳卒中の診断方法・基準が変化しており、それが解析結果に影響を及ぼした可能性を否定できないことが挙げられるという。また、解析対象者の脳卒中リスクに影響を及ぼし得る、食事・喫煙・飲酒などの既知のリスク因子の全てを把握して調整できたわけではないとも追記されている。

[2023年6月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら