年を重ねても鋭敏な頭脳を保ちたい人は、マーガリンの代わりにオリーブ油を使うようにすると良いようだ。米国のヘルスケア専門家9万人以上を対象とした予備的研究から、オリーブ油の愛用者は、オリーブ油をほとんど摂取しない人に比べて、今後30年間で認知症により死亡するリスクが25%低いことが明らかになった。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnne-Julie Tessier氏らによるこの研究の詳細は、米国栄養学会(ASN)の年次総会(Nutrition 2023、7月22〜25日、米ボストン)で発表された。
オリーブ油が心血管の健康や死亡リスク、認知機能に有益なことは過去の研究で示唆されている。しかし、オリーブ油が食生活全体とは無関係に、認知症による死亡リスクの低下と関連しているのかは明らかになっていない。
Tessier氏らは、Nurses’ Health Study(NHS)への参加女性6万582人と、Health Professionals’ Follow-Up Study(HPFS)への参加男性3万1,801人を対象に、オリーブ油の摂取と認知症による死亡との関連を検討した。ベースライン(1990年)時の対象者の平均年齢は56±8歳で、心血管疾患やがんに罹患している人はいなかった。
28年にわたる追跡期間中に、4,749人が認知症により死亡していた。Cox比例ハザードモデルによる検討の結果、1日に大さじ半分超(>7g/日)のオリーブ油を摂取していた人では、オリーブ油を全く/滅多に摂取しない人に比べて、認知症による死亡リスクが25%低いことが明らかになった(調整ハザード比0.75、95%信頼区間0.67〜0.85)。オリーブ油の摂取と食事の質との間に、認知症による死亡リスクに影響を与える交互作用は認められなかった。また、1日5gのマーガリンやマヨネーズを同量のオリーブ油に置き換えることで、認知症による死亡リスクが5〜12%低下することも示された。他の植物油やバターをオリーブ油に置き換えても、同リスクの有意な低下は認められなかった。
専門家たちは、このような研究はオリーブ油と認知症による死亡リスクとの関連を示したに過ぎず、両者の因果関係が証明されてはいないとして、慎重な解釈を求めている。それでも、本研究には関与していない、米国栄養士会の元会長で、米セントルイスを拠点に活動する栄養コンサルタントであるConnie Diekman氏は、オリーブ油に豊富に含まれているオメガ3脂肪酸には抗炎症作用があることを指摘し、「認知症の発症プロセスには炎症が関与すると考えられているため、オリーブ油の常食が有益に働く可能性は十分にある」との見方を示す。
Tessier氏は、「過去の研究では、オリーブ油を多く含む食事の摂取は、血圧、コレステロール、血管機能などの改善につながり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下することが示唆されている」と説明する。しかし同氏は、「今回の研究で確認されたオリーブ油と認知症による死亡リスクの低下との関連は、心血管系の健康からは説明できない」と述べ、オリーブ油に含まれる何らかの栄養素が認知症による死亡リスクの低下に寄与している可能性を示唆している。
この研究では、「なぜ」「どのようにして」の問いに対する答えを見出すことはできないが、「少なくとも、マーガリンをオリーブ油に置き換えて摂取するのは理にかなった行動だ」とTessier氏は言う。
Tessier氏とDiekman氏は、一種類の食品ではなく、食生活全般に注意を払うべきだと主張する。Diekman氏は、「科学が示しているのは、植物性食品の摂取を増やし、動物性食品の摂取を減らすことにより、全体的な健康のより良い基盤が作られるということだ」と話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2023年7月24日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら