1歳時のテレビやスマートフォンを見る時間(スクリーンタイム)は、特定の領域の発達の遅れと関連することが、日本の研究で明らかにされた。1歳時の1日当たりのスクリーンタイムが4時間以上だった子どもでは、2歳時と4歳時に、コミュニケーション領域と問題解決領域に発達の遅れが見られる可能性の高いことが確認されたという。東北大学大学院医学系研究科の高橋一平氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に8月21日掲載された。
この研究では、東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査に参加している母子7,097組(子どもの51.8%は男児)を対象に、子どもが1歳時のスクリーンタイムと2歳時および4歳時の5つの発達領域における遅れとの関連が検討された。親への調査から子どもが1歳時のスクリーンタイムに関する情報を入手し、1時間未満、1時間以上2時間未満、2時間以上4時間未満、4時間以上の4つに分類した。また、子どもが2歳時と4歳時に、日本語版ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, Third Edition)を用いて発達の遅れについて評価した。ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人的・社会的スキルの5領域について、それぞれ0〜60点で評価するもので、総スコアが平均から−2標準偏差以下だった場合を「発達に遅れがある」とみなした。
1歳時の1日当たりのスクリーンタイムは、1時間未満が48.5%(3,440人)、1時間以上2時間未満が29.5%(2,095人)、2時間以上4時間未満が17.9%(1,272人)、4時間以上が4.1%(290人)だった。スクリーンタイムが長い子どもの母親には、年齢が若い、初産である、学歴が低い、所得や世帯の教育水準が低い、産後うつ病を有する率が高いという特徴があった。解析の結果、1歳時の4時間以上のスクリーンタイムは、2歳時および4歳時のコミュニケーション領域(2歳時:オッズ比4.78、95%信頼区間3.24〜7.06、4歳時:同2.68、1.68〜4.27)と問題解決領域(2歳時:同2.67、1.72〜4.14、4歳時:同1.91、1.17〜3.14)における発達の遅れと有意に関連することが示された。
この研究報告を受けて、米イェール大学児童研究センターの発達心理学者であるDavid Lewkowicz氏は、「スクリーンを見ること自体が悪いのではなく、スクリーンが何の代わりに使われているかが問題なのかもしれない。赤ちゃんは、対面での対話の中で、親の表情、言葉、声のトーン、身体的フィードバックを通して言語と意味に関する情報を得ている。これらは、スクリーンを見ているときには得られないものだ」と同氏はNew York Times紙に語っている。
その上でLewkowicz氏は、「赤ちゃんにはできるだけたくさん対面で話しかけるべきだ。私は、赤ちゃんにどれくらいのスクリーンタイムを許していいのかと尋ねられたときには、いつもそう答えている」と話す。さらに同氏は、「子どもにスクリーンタイムを許すべきではないと親に助言するのは現実的ではない。そう助言しても、それに従う親などいないだろう。それでも、スクリーンタイムは適量にとどめ、より多くの時間を現実世界での社会的交流に費やすべきことは確かだ」と主張している。
研究グループは、本研究では、娯楽目的と教育目的でのスクリーンタイムの比較を行っていないことに言及し、今後の研究ではその点を追求すべきだとの考えを示している。
[2023年8月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら