COVID-19罹患後に高血圧リスク上昇の懸念

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/09/28

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後の人は、高血圧の新規発症リスクが高いことを示唆するデータが報告された。そのリスクの程度は、インフルエンザ感染後に認められる高血圧発症リスクよりも高いという。米アルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センターのTim Duong氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に8月21日掲載された。

 高血圧患者はCOVID-19罹患時の重症化リスクが高い傾向のあることが知られているが、その反対にCOVID-19罹患が高血圧発症リスクを押し上げるのか否かは、従来明らかでなかった。論文の上席著者であるDuong氏によると、「COVID-19罹患後に高血圧リスクが上昇することを示したのは、恐らく本研究が初めて」という。

 この研究は、ニューヨーク市内の複数の医療機関の患者データを用いた後方視的観察研究として実施された。2020年3月~2022年8月のCOVID-19患者4万5,398人と、2018年1月~2022年8月のインフルエンザ患者1万3,864人を解析対象とした。いずれも罹患前に高血圧の既往歴のある患者は除外された。

 罹患後平均6カ月の追跡で、COVID-19急性期に入院を要した患者の20.6%、入院を要さなかった患者の10.9%が高血圧を発症していた。それらの割合は、インフルエンザ急性期に入院を要した人の2.23倍(95%信頼区間1.48~3.54)、インフルエンザ急性期に入院を要さなかった人の1.52倍(同1.22~1.90)であり、いずれも有意に高リスクだった。高齢者、男性、基礎疾患〔COPD(慢性閉塞性肺疾患)、冠状動脈疾患、慢性腎臓病〕を有する場合、およびステロイド治療中などでは、COVID-19罹患後の高血圧発症リスクがより高いことも明らかになった。

 では、なぜCOVID-19罹患によって血圧が上昇するのだろうか。Duong氏は、「正確なその理由は、まだ誰にも分からない」と述べている。推測されるメカニズムとしては、新型コロナウイルスが血圧の調節不全や心臓の機能不全を引き起こす可能性に加えて、COVID-19罹患による心理的苦痛、身体活動量の減少、腎障害、呼吸機能低下、全身性の炎症などを介した経路も考えられるとのことだ。また同氏は、「原因が何であれ、COVID-19の患者数自体が膨大であることから、罹患後の高血圧リスクの上昇は憂慮すべき事態である」としている。

 Duong氏の考え方には、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAmitava Banerjee氏も、「この問題は間違いなく新たな懸念材料だ」と同意を示し、「COVID-19パンデミックの影響による高血圧の増加は、いずれ心臓発作や脳卒中などの心血管疾患の増加につながることだろう。高血圧のスクリーニングを強化する必要があるのではないか」と提案している。

 また、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のDavey Smith氏は本研究の結果を、「将来的なCOVID-19関連死増加の前兆」と捉えている。同氏によると、高血圧はすでに世界中の全死亡の約13%に関与しており、「COVID-19罹患後に高血圧の新規発症が増えるのであれば、高血圧に関連する死亡がより増加することは避けられない」と解説。同氏は公衆衛生対策の拡充を訴えるとともに、「医師はCOVID-19罹患後の患者の血圧や血糖のモニタリングを強化し、高血圧や糖尿病が見つかった場合は積極的に治療する必要がある」と付け加えている。

[2023年8月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら