洪水を経験した人は、災害が起きている間だけでなく、その後も最長で60日にもわたって死亡リスクが上昇することが、新たな研究で明らかにされた。モナシュ大学(オーストラリア)公衆衛生・予防医学部のYuming Guo氏らによるこの研究の詳細は、「The BMJ」に10月4日掲載された。
Guo氏らはこの研究で、2000年から2019年の間に1回以上の洪水に見舞われた、世界35カ国の761カ所のコミュニティーの死亡データを入手して調査し、洪水を経験することと、あらゆる原因による死亡(全死亡)、心血管疾患による死亡、および呼吸器疾患による死亡との関連を時間の経過に沿って検討した。
その結果、研究対象期間中に、全死亡が4760万件、心血管疾患による死亡が1110万件、呼吸器疾患による死亡が490万件生じていたことが明らかになった。全コミュニティーにおいて、全死亡、呼吸器疾患による死亡のリスクは洪水の発生日から最長で60日目までそれぞれ2.1%(累積相対リスク1.021、95%信頼区間1.006〜1.036)と4.9%(同1.049、同1.008〜1.092)、心血管疾患による死亡は最長50日目まで2.6%(同1.026、同1.005〜1.047)増加していた。このような関連は国や地域などによって異なり、貧困な地域や高齢者の多い地域でのリスクが最も高かった。
こうした結果を受けてGuo氏は、「われわれは今や、『洪水後に死亡リスクが変わるのか』という問いに対する答えが『イエス』であることを知っている。この知見は、将来、洪水が発生した際に政策立案者が考慮すべきものだ」と述べている。
研究グループは、気候変動の影響で、洪水は今後、これまで以上に激烈化する上に長期化し、頻度も増すことが予想されることを指摘し、今回の研究結果は、大いに懸念されるべきだと述べている。すでに洪水は、自然災害全体の43%を占めているという。
洪水後の自然死は、食物や水の汚染、医療へのアクセス困難、心理的障害、真菌やバクテリア、ウイルスなどの病原体への曝露が原因である可能性がある。Guo氏は、「医療従事者は、特に脆弱な地域や、洪水が続くことで累積的な影響が及ぶ地域において死亡リスクが高まることを認識する必要がある」と主張する。さらに、「医療従事者はこの知識を診療に取り入れ、自然災害による回避可能な死亡を減らすために、医療サービスの突然の需要急増に対して備えておく必要がある。また、公衆衛生当局は、洪水後の死亡率の変化を監視し、迅速に介入できるようにしておくことが重要だ」と述べている。
なお、本研究は、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院などとの共同研究として行われた。
[2023年10月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら