赤身肉の摂取量が多い人ほど糖尿病発症リスクが高いというデータが報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のXiao Gu氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に10月19日掲載された。
この研究は、米国内の看護師を対象に実施されている「Nurses' Health Study(NHS)」、NHSより新しい世代の看護師を対象に実施されている「NHS II」、および、医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」の参加者21万6,695人(女性81%)を解析対象として実施された。赤身肉の摂取量は、参加登録時と2~4年ごとに、半定量的な食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価された。
548万3,981人年の追跡で、2万2,761件の2型糖尿病発症が確認された。交絡因子を調整後、赤身肉の総摂取量、および赤身の加工肉や未加工肉別の摂取量は、いずれも2型糖尿病発症リスクとほぼ直線的な正相関が見られた。例えば、赤身肉の総摂取量の最低五分位群(摂取量の少ない下位20%)を基準として、最高五分位群(摂取量の多い上位20%)の糖尿病発症リスクは約6割高かった〔ハザード比(HR)1.62(95%信頼区間1.53~1.71)〕。
この研究結果は、赤身肉を多く摂取することが2型糖尿病を引き起こすという因果関係の証明にはならない。しかし論文の筆頭著者であるGu氏は、「赤身肉は一般的に飽和脂肪酸が多く、多価不飽和脂肪酸が少ない。飽和脂肪酸はβ細胞(膵臓にあるインスリン分泌細胞)の機能、およびインスリン感受性を低下させて、2型糖尿病のリスクを高めると考えられている」と解説。また同氏によると、赤身肉にはヘム鉄が多く含まれており、ヘム鉄が酸化ストレスやインスリン抵抗性を高めるなど、複数の経路で2型糖尿病のリスクを押し上げる可能性があるという。
一方、1日に摂取する赤身肉のうち1サービングをナッツや豆類に置き換えると、2型糖尿病の発症リスクは約3割低下すると計算された〔HR0.70(0.66~0.74)〕。また、加工された赤身肉をナッツや豆類に置き換えた場合には約4割〔HR0.59(0.55~0.64)〕、未加工の赤身肉を置き換えた場合には約3割〔HR0.71(0.67~0.75)〕、それぞれリスクが低下すると計算された。この点についてGu氏は、「ナッツや豆類などの植物性タンパク質は、最も健康的なタンパク源の一つである」と解説している。
Gu氏はまた、「米国だけでなく世界中で糖尿病の罹患率が急速に上昇している。糖尿病は心血管疾患や腎臓疾患、がん、認知症の主要な危険因子であるため、その発症予防が重要だ」と述べ、さらに、「タンパク源を赤身肉から植物性食品に置き換えることは、温室効果ガスの排出と気候変動の抑制をはじめとする、地球環境上のメリットにもつながる」と付け加えている。
[2023年10月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら