医師が患者に減量を勧める場合、楽観的な言葉や明るい調子で減量が肯定的な機会であることを伝えると、患者は減量に成功しやすいことが、新たな研究で明らかになった。英オックスフォード大学Nuffield Department of Primary Care Health SciencesのCharlotte Albury氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に11月7日掲載された。
国際的なガイドラインでは、プライマリケア医は患者の肥満度を確認し、過体重や肥満の患者には治療を提供すべきことを推奨している。患者は、医師の使う言葉や口調を重視しているものの、医師が患者の体重についてどのように話し、どのように治療を提供すれば患者が受け入れやすく、効果も見込めるのかについてのエビデンスはほとんどない。
そこでAlbury氏らは、英国の38カ所のプライマリケア診療所において246人の患者と87人の医師との間で交わされた、無料で行われる12週間の行動的体重管理プログラムに関する会話の録音データを分析した。このデータから、減量プログラムを患者に勧める医師の言葉遣いや口調に基づいて患者へのアプローチを3種類に分類し、各アプローチと患者の12カ月後の成果(減量の程度)や患者の取った行動(体重管理プログラムへの同意や参加など)との関連を検討した。
3種類のアプローチとは、1)減量のベネフィットと減量プログラムへの参加が患者にとっては好機であることを強調しながら、前向きかつ楽観的に患者とコミュニケーションを取る「グッドニュース」アプローチ、2)専門家の立場から肥満の問題点を強調し、減量という課題を残念がりながら悲観的に伝える「バッドニュース」アプローチ、3)減量について肯定的にも否定的にも伝えない「中立的」なアプローチである。「グッドニュース」アプローチでは、医師が肥満や体重、BMIを問題として取り上げることはほぼなく、減量プログラムに関する情報がスムーズかつ迅速に、興奮をもって伝えられた。
録音データを分析したところ、医師のアプローチとしては「中立的」が最も多く(102人)、「バッドニュース」(82人)と「グッドニュース」(62人)が後に続いた。「中立的」なアプローチと「グッドニュース」アプローチを比べると、後者では、プログラムへの患者の参加同意率は前者の1.25倍、参加率は1.45倍であり、体重は平均3.6kg以上多く減ったことが明らかになった。これに対して、「中立的」なアプローチと「バッドニュース」アプローチとの間で体重変化の平均値に有意な差は認められなかった。
研究グループは、「グッドニュース」アプローチを受けた患者で体重が大幅に減ったのは、減量プログラムへの参加率が高かったためだと説明している。実際、減量プログラムへの参加率は、「グッドニュース」アプローチを受けた患者で83%であったのに対し、それ以外のアプローチを受けた患者では50%に届かなかったという。
Albury氏は、「言葉が重要なことは言うまでもないが、この研究から、言葉は短期的にも長期的にも極めて重要なことが浮き彫りにされた。全体としては、本研究により、コミュニケーションの微妙な差が1年後の患者の転帰に大きな影響を与えることが示された。『グッドニュース』を構成するささやかな要素が、明確かつポジティブな影響をもたらしたと言える」と話している。
[2023年11月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら