軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、嗅覚障害や味覚障害を経験している人にとって朗報となる研究結果が発表された。COVID-19パンデミック初期に軽症のCOVID-19に罹患した人を3年間追跡したこの研究によると、罹患者と非罹患者との間での嗅覚障害と味覚障害の有病率は、罹患から3年後では同等であることが明らかになった。トリエステ大学(イタリア)のPaolo Boscolo-Rizzo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に11月9日掲載された。
Boscolo-Rizzo氏らは、軽症のCOVID-19に罹患した88人(症例群)と新型コロナウイルスのRT-PCR検査で陰性と判定された88人(対照群)の計176人(両群ともに、試験登録時の年齢中央値49歳、女性58.0%)を対象に、試験登録から1、2、3年後の患者の自己報告による嗅覚障害と味覚障害の有病率を比較した。なお、軽症のCOVID-19とは、臨床評価でも画像検査でも下気道疾患の所見が認められず、酸素飽和度が94%以上の場合と定義された。
症例群でのCOVID-19急性期と、罹患から1、2、3年後時点での嗅覚・味覚障害の有病率は、それぞれ64.8%、31.8%、20.5%、15.9%だった。症例群でのCOVID-19罹患から1、2、3年後時点での嗅覚障害の有病率は、それぞれ40.9%、27.3%、13.6%、対照群の有病率は10.2%だった。罹患から2年後時点での両群の絶対差は17.1%(95%信頼区間4.7〜29.4%)と有意だったが、3年後時点での絶対差は3.4%(−7.3〜14.1%)と有意ではなくなった。
一方、症例群での罹患から1、2、3年後時点での味覚障害の有病率はそれぞれ26.1%、13.6%、11.4%、対照群の有病率は10.2%だった。罹患から2年後時点での両群の絶対差は3.4%(95%信頼区間−7.3〜14.1%)、3年後時点での絶対差は1.1%(−9.2〜11.4%)といずれも有意ではなかった。
こうした結果を受けて研究グループは、これまでCOVID-19罹患後の嗅覚障害と味覚障害の精神身体的評価に関するデータはなかった点を強調し、「この研究により、症例群でのCOVID-19罹患から3年後時点での嗅覚障害の有病率は対照群と同等であり、また、罹患から2年後および3年後の時点での味覚障害の有病率に関しても、両群間で同等であることが明らかになった」と結論付けている。
研究グループは、「今回の研究結果は、COVID-19に罹患して嗅覚障害や味覚障害に悩まされている患者にとって喜ばしいニュースとなるはずだ」との見方を示す。そして、「COVID-19罹患者で嗅覚障害が生じている人でも、感染から3年が経過すればその障害から回復するようなので、安心してほしい」と話している。
[2023年11月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら