外傷により大量出血を来している患者には、病院到着後にできるだけ早く全血輸血を行うことで、患者の生存率が改善する可能性のあることが新たな研究で明らかにされた。ただし、病院到着後の全血輸血がたった14分遅れただけでも、それが生存にもたらすベネフィットは著しく減少することも示されたという。米ボストン大学医学部外科分野のCrisanto Torres氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に1月31日掲載された。
Torres氏らによると、現行の外傷救急治療では、重度の出血による輸血を必要とする患者の凝固障害リスクを緩和するために、赤血球や血小板などの特定の血液成分製剤をバランスよく輸血するアプローチを取るべきことが強調されているという。米国では、外傷患者に対する治療は年々進歩しているものの、大量出血による死亡は依然として予防可能な死因の中で最も多く、克服すべき課題であることに変わりはない。
こうした中、外傷センターでは、成分輸血療法に基づく大量輸血プロトコル(MTP)の補助手段としての全血輸血に対する関心が再び高まりを見せている。最近の研究でも、全血輸血が外傷患者の病院到着から24時間後および30日後の死亡率の低下と関連することが示されている。しかし、全血輸血のタイミングが患者の生存に与える影響についてのエビデンスはいまだ十分ではない。
そこでTorres氏らは、外傷による大量出血のためにMTPが必要とされ、24時間以内に全血輸血を受けた18歳以上の救急外来(ED)患者1,394人(年齢中央値39歳、男性83%)の症例を分析した。大量出血は、収縮期血圧が90mmHg未満で、ショック指数が1より大きく、MTPが必要な場合と定義された。ショック指数は出血性ショックの評価に用いられる指標で、1.0以上でショック状態と見なされる。ED到着から24時間以内の任意の時点において、MTPの補助としての全血輸血を早期に受けた患者と受けていない患者との間で、ED到着から24時間後と30日後の生存について比較した。
その結果、任意の時点で早期に全血輸血を受けた患者は、それより後に全血輸血を受けた患者に比べて、ED到着から24時間後の死亡リスクが有意に低いことが示された(調整ハザード比0.40、95%信頼区間0.22〜0.73、P=0.003)。このような早期の全血輸血が生存にもたらすベネフィットは、ED到着から30日後でも認められた(同0.32、0.22〜0.45、P<0.001)。さらに、ED到着から全血輸血までの時間が14分を過ぎると、生存の確率は著しく低下することも明らかになった。
Torres氏は、「われわれの研究結果は、病院到着後14分以内の全血輸血の実施を目標とすべきことを示唆するものだ。全血輸血が1分遅れるごとに生存率は低下するが、最も顕著な低下は14分以降に認められた」と話す。そして、「これらの知見は、臨床医や病院システムにとって、MTPに組み入れられる標準的な緊急輸血用血液製剤に全血製剤を含めることを検討するきっかけになるかもしれない」と期待を示している。さらに同氏は、「傷害現場やEDへの搬送中に全血輸血を行うことでも、生存に対する同様のベネフィットを見込める可能性がある」とボストン大学のニュースリリースで付け加えている。
[2024年2月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら