眠っているときに他人から心を落ち着かせる言葉をかけられると、それに心が敏感に反応して心拍が遅くなることが、新たな研究で明らかになった。リエージュ大学(ベルギー)GIGAサイクロトロン研究センターのAthena Demertzi氏らによるこの研究は「Journal of Sleep Research」に2月14日掲載された。
Demertzi氏らは2021年に発表した脳波を使った研究で、睡眠中の人に心を落ち着かせる言葉をかけると、深い眠りの時間が増えて睡眠の質が向上することから、重要な意味や価値を持つ言葉が睡眠に良い影響を与えることができる可能性を示唆していた。このような結果から研究グループは、心を落ち着かせる言葉を聞くと、睡眠中でも脳は感覚情報を解釈して体をリラックスさせることができるとの仮説を立てていた。
今回の研究は、この仮説を心電図(ECG)を用いて検証したもの。具体的には、脳や体の回復に重要な役割を果たしていると考えられているノンレム睡眠中の研究参加者に心を落ち着かせる言葉をかけることで、ECGの活動(心拍間隔)がどのように変化するのかを調べた。
その結果、心を落ち着かせる言葉をかけている間は、言葉をかけていない場合と比べて心拍間隔が有意に長くなることが明らかになった。このような心拍間隔の延長は、ニュートラルな言葉をかけている間には認められなかった。また、心臓と脳の活動のマーカーを比較し、聴覚情報による睡眠の調節にそれぞれがどれだけ寄与しているかを調べたところ、心臓の活動は睡眠中でも独立して睡眠に影響を与えることが示唆された。
こうした結果を受けてDemertzi氏は、「睡眠に関する研究の大半は、睡眠中の脳の活動にばかり焦点を当てており、身体の活動について調べたものはほとんどない。それでもわれわれは、睡眠中のように相互のやりとりが完全にできない状況下でも、脳と体はつながっているとの仮説を立てていた。人間がどのように考え、環境に反応するのかを完全に理解するには、脳の情報と体の情報の両方を考慮する必要がある」とリエージュ大学のニュースリリースの中で述べている。
研究グループは、心臓の反応に焦点を当てて睡眠の研究を進めることで、睡眠機能の研究分野において、身体的な影響を考慮する、より包括的なアプローチを推進していきたいとの考えを示している。また、近年、内受容感覚が睡眠や睡眠障害の有望なアプローチとして注目されていることに触れ、心臓の活動の分析を通じて心拍などの体が発する信号が睡眠機能とその感覚刺激による変調に果たしている役割が明らかになることに期待を寄せている。
[2024年2月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら