慢性疾患の予防効果を目的にカルシウムとビタミンDを摂取している更年期の女性をがっかりさせる研究結果が報告された。閉経後女性の慢性疾患の予防戦略に焦点を当てた「女性の健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)」のデータを事後解析した結果、カルシウムとビタミンDの摂取により、閉経後女性のがんによる死亡リスクは7%低下するものの、心血管疾患による死亡リスクは6%上昇するため、全死亡に対する正味の効果はないことが明らかになった。米アリゾナ大学健康推進科学分野教授のCynthia Thomson氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に3月12日に掲載された。
骨の健康を守るために、長年にわたってカルシウムとビタミンDを摂取している閉経後女性は少なくない。しかし、致死的な心疾患やがんなどの慢性疾患に対するこれらの栄養素の予防効果については明確になっていない。
1991年に米国立衛生研究所(NIH)により開始されたWHIは、数十年にわたって閉経後女性の健康を追跡してきた大規模研究で、数万人の女性が登録されている。今回の研究テーマである、閉経後女性でのカルシウムとビタミンDの摂取効果については、2006年に初めて、7年間の追跡データの解析結果が報告されていた。研究グループによると、その結果は「ほとんど効果なし」というものだった。
今回の研究では、長期追跡データを解析することでこの結果に変化が認められるのかどうかが調査された。対象は、3万6,283人の閉経後女性で、乳がんや大腸がんの既往がある者は含まれていなかった。女性は、1日1,000mgの炭酸カルシウム(カルシウム含有量としては400mg)と400IUのビタミンD3を摂取する群(CaD群)とプラセボを摂取する群(プラセボ群)に1対1の割合でランダムに割り付けられていた。
その結果、累積追跡期間中央値22.3年の経過後にCaD群で1,817人、プラセボ群で1,943人ががんにより死亡しており、前者では後者に比べてがんによる死亡リスクが7%低下することが示された(ハザード比0.93、95%信頼区間0.87〜0.99)。一方、心血管疾患による死亡については、CaD群では7,834人、プラセボ群では7,748人が確認されており、前者では後者に比べて死亡リスクが6%高いことが示された(同1.06、1.01〜1.12)。それゆえ、死亡リスクという点でカルシウムとビタミンD摂取の有益性は確認されなかった。
Thomson氏は、「カルシウムサプリメントの摂取が冠動脈の石灰化を促し、心血管疾患による死亡リスクを増加させる可能性は考えられる」との見方を示している。
研究グループはこの研究の結論として、「閉経後女性を20年以上追跡した調査の解析結果に基づくと、カルシウムとビタミンDの摂取は、がんによる死亡リスクを低減する一方で心血管疾患による死亡リスクを増大させ、結果的に全死亡リスクには影響を及ぼさないことが明らかになった」と述べている。
[2024年3月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら