大都市の明るい光は人々の心をワクワクさせるかもしれないが、脳卒中リスクを高める可能性もあることが、浙江大学(中国)医学部のJian-Bing Wang氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Stroke」3月25日号に掲載された。Wang氏らは、夜を明るく照らす屋外の人工光(以下、夜間の人工光)が脳の血流に影響を与えて脳卒中が起こりやすくなるようだとの見方を示している。研究の背景情報によると、人工光の過剰な使用によって、世界人口の5分の4が光害環境で暮らさざるを得ない状況に置かれているという。
Wang氏らは、中国の東海岸の主要な港湾都市で工業都市でもある寧波(人口約820万人)に住む2万8,302人の成人(平均年齢61.51±11.02歳)のデータを分析し、夜間の人工光への曝露と脳血管疾患との関連を検討した。脳血管疾患には、動脈に血栓が詰まって脳への血流が阻害されることで生じる脳卒中〔虚血性脳卒中(脳梗塞)〕や脳の動脈の出血による脳卒中(出血性脳卒中)がある。夜間の人工光への曝露量と大気汚染を、光害をマッピングした衛星画像を用いて評価し、それぞれ4群に分類した。
2015年から2021年までの6年間の追跡期間中に1,278件の脳血管疾患(虚血性脳卒中777件、出血性脳卒中133件)が発生していた。解析の結果、夜間の人工光の曝露量が最も多い群では最も少ない群に比べて、脳血管疾患のリスクが43%高いことが示された。また、大気中の粒子状物質(燃料の燃焼、粉塵、煙など)であるPM2.5やPM10、自動車や発電所などから排出される窒素酸化物の曝露量が最も多い群では最も低い群に比べて脳血管疾患のリスクがそれぞれ41%、50%、31%高いことも判明した。
これらの研究結果に基づきWang氏は、「潜在的に有害な影響から身を守るため、特に都市部に住んでいる人に、夜間の人工光への曝露量を減らすことを考慮するよう助言したい」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。
Wang氏らの説明によれば、夜間に持続的に明るい光にさらされると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制される。また、夜間の人工光によって質の高い睡眠が妨げられることで、脳卒中リスクが高まる可能性が考えられるという。同氏は、「大気汚染だけでなく、光害などの環境要因による疾病負担を軽減するため、より効果的な政策と予防戦略を立てる必要がある。このことは特に、人口密度が高く大気汚染レベルの高い地域に住む人にとって重要だ」と指摘している。
[2024年3月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら