脳卒中の診断、年齢の左桁バイアスはあるか

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/12

 

 人間には、年齢などの連続変数の左端の桁の数字に基づいて判断する傾向(left-digit bias:左桁バイアス)がある。このバイアスが医師の意思決定にも影響するのだろうか。最近の研究1)では、80歳の誕生日直前の患者より、直後の患者に冠動脈バイパス術を行う可能性が低かったことが示されている。今回、京都大学の福間 真悟氏らは、脳卒中に対する画像検査のオーダーに年齢の左桁バイアスが影響するかを検討した。その結果、男性患者に対してのみ、40歳前後でオーダーの不連続的な増加がみられ、医師の脳卒中リスクの推定に認知バイアスが存在することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年8月26日号に掲載。

 本研究は、回帰不連続デザイン(RDD)によるコホート研究で、日本における全国的な労働年齢の健康保険の請求データベースから、2014年1月~2019年12月に時間外受診をした患者を解析対象とした。初診時、医師が脳卒中診断のために画像検査(CTまたはMRI)をオーダーしたかどうかを、患者年齢別に調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・総受診数29万3,390件のうち、40歳からデータに基づいた最適バンド幅である6.0歳以内の4万8,598件を解析対象とした(平均年齢40.8歳[標準偏差3.4]、女性50.5%)。
・脳卒中に対する画像検査を受ける基準の確率は0.9%であった。
・40歳未満の患者より40歳以上の患者で、医師が画像検査をオーダーする可能性が高かった(調整後の差:+0.51パーセンテージポイント[pp]、95%信頼区間[CI]:+0.13~+1.07pp、p=0.01)。
・脳卒中に対する画像検査のオーダーにおいて、男性患者では40歳で有意な非連続的変化がみられた(+0.84pp、95%CI:+0.24~+1.69pp、p=0.009)が、女性患者ではみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)

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