気候変動による気象の激しい変化は、脳卒中による死者数の増加につながっているようだ。新たな研究で、2019年には、厳寒をもたらす寒冷前線や灼熱の熱波が年間50万人以上の脳卒中による死亡に関係していた可能性のあることが示された。中南大学湘雅医院(中国)のQuan Cheng氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月10日掲載された。
Cheng氏は、「近年の劇的な気温の変動は、人間の健康に影響を及ぼし、広範な懸念を引き起こしている」と述べ、「われわれの研究では、このような気温の変動は世界中で脳卒中の負担を増加させ、特に高齢者や医療格差の大きい地域においてその影響が強い可能性が示唆された」と同誌のニュースリリースの中で述べている。
研究グループは、「気温は、高過ぎても低過ぎても、脳卒中のリスクを高め得る」と説明する。気温が低いと血管が収縮して血圧が上昇する。高血圧は脳卒中の主なリスク因子である。一方、気温が高いと脱水症状が引き起こされ、血液が濃くなったり血流が悪くなったりする。米国心臓協会(AHA)のデータによると、米国における脳卒中による死者数は、2011年から2021年の間に26%増加している。研究グループは、「この増加の一部は、気候変動と関連している可能性がある」との見方を示している。
今回の研究では、204の国や地域の30年間(1990〜2019年)の健康記録と気象情報のデータを用いて、非至適気温に起因する脳卒中による負荷(死亡、障害)について検討した。気象情報は、0.5度ごとの経線と緯線に囲まれた範囲の気温データを入手し、国や地域ごとの夏と冬の月単位の平均気温、平均最高気温、平均最低気温を計算した。
その結果、2019年には、非至適気温に起因する脳卒中による死者数は52万1,031人、非至適気温に起因する脳卒中による障害調整生存年(DALY)は942万3,649と推計された。この死者数は、AHAが提示している2019年の世界全体での脳卒中に起因する総死者数(660万人)のかなりの部分を占めている。特に、低い気温に起因する脳卒中による死者数は47万4,002人と推定され、高い気温よりもはるかに影響の大きいことがうかがわれた。また、死者数には男女による違いも見られ、年齢標準化死亡率(10万人当たり)は、男性で7.7であったのに対し女性では5.9であった。地理的に見て非至適気温に起因する脳卒中による死亡率が最も高かったのは中央アジアであった。
Cheng氏は、「気温の変動が脳卒中に及ぼす影響を明らかにし、健康格差に対処するための解決策を見つけ出すためには、さらなる研究が必要だ。今後の研究で、化石燃料の燃焼、森林伐採、工業プロセスなど、気候変動の潜在的な原因に対処する効果的な健康政策を特定し、それによりこの脅威の軽減を目指すべきだ」と述べている。
[2024年4月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら