片頭痛が始まる前の最初の兆候(プロドローム)が現れた時点で治療薬のubrogepantを使用すると、患者はほとんど症状を感じることなく普段通りの生活を送れる可能性のあることが、新たな臨床試験で明らかになった。Ubrogepantは、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)受容体に結合し、痛みの伝達に重要な役割を果たしているCGRPを遮断することにより効果を発揮する。米アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard Lipton氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月28日掲載された。
Lipton氏は、「今回の結果に基づくと、片頭痛のプロドロームが現れた時点で患者にubrogepantによる治療を行うことで、片頭痛発作を初期段階で迅速に治療することができ、患者は不快感や混乱をほとんど感じることなく日常生活を送ることができる可能性がある。これは、片頭痛を持つ人の生活の質(QOL)の向上につながるかもしれない」と述べている。
この臨床試験では、片頭痛発作を月に2〜8回経験する18〜75歳の患者518人が対象とされた。対象者全員が、片頭痛が生じる1〜6時間以内にプロドロームとして、光や音に対する敏感さ、疲労感、首の痛みやこわばり、めまい、視覚前兆などを定期的に経験していた。試験では、対象者の2回の片頭痛のプロドロームに対して治療を行った。患者は、治療順序として、1回目のプロドロームにはプラセボ、2回目のプロドロームにはubrogepant 100mgによる治療を行う群と、その逆の順序で治療を行う群にランダムに割り付けられた。解析は477人を対象に行われた。片頭痛による日常的な活動への制限の程度は、対象者が5段階のリッカート尺度により、0(全く制限なし)から4(極端に制限されている)で評価した。
その結果、治療から24時後の時点で日常的な活動について「制限なし」と答えた対象者の割合は、ubrogepant 100mgによる治療を受けた場合には65.4%だった一方で、プラセボによる治療を受けた場合には47.8%にとどまることが明らかになった。Ubrogepant 100mgによる治療効果は、薬の投与後2時間で現れ、ubrogepantによる治療を受けた人ではプラセボによる治療を受けた人に比べて「制限なし」を報告する可能性が76%高かった(オッズ比1.76、95%信頼区間1.32〜2.35、P=0.0001)。
Lipton氏は、「片頭痛は世界的に最も患者数の多い病気の一つであるが、この症状に苦しむ非常に多くの人が治療を受けていないか、治療に満足していないことが報告されている」と話す。その上で、「片頭痛のプロドロームが現れたときのケアを改善することが、予後を改善する鍵になる可能性がある。この研究結果は、ubrogepantが、片頭痛を持つ人が普段通りに日常生活を送るのに役立つ可能性のあることを示唆している」と述べている。
[2024年8月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら