「永遠の化学物質」PFASが睡眠障害を引き起こす可能性も

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/10/31

 

 血液中の「永遠の化学物質」とも呼ばれる有機フッ素化合物の「PFAS」が、若年成人の睡眠障害と関連していることが、米南カリフォルニア大学(USC)のグループによる研究で示された。PFASは有機フッ素化合物のペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称で、この研究からはPFASのうち4種類の物質の血中濃度が睡眠障害と関連していることが明らかになった。詳細は、「Environmental Advances」10月号に掲載された。

 PFASは、テフロン加工された調理器具やシャンプーなど、さまざまな製品に使用されているが、何十年もの間、環境中に残留する可能性がある。また、食品や水と一緒に体内に摂取される可能性も考えられる。研究グループによると、米国人の大多数において、血中のPFAS濃度は検出可能レベルであるという。

 この研究は、USCの別の研究で数年前に血液採取を受けた19~24歳の男女136人(試験開始時の平均年齢19.45歳)を対象に実施された。研究参加者は睡眠時間と睡眠の質に関する情報も提供しており、136人中76人は追跡調査も受けていた。対象者の7種類のPFASの血中濃度を測定し、「低」から「高」までの3つのカテゴリーに分けた。

 その結果、7種類のPFASのうち、4種類(PFDA、PFHxS、PFOA、PFOS)が睡眠障害に関連していることが明らかになった。具体的には、ベースラインからPFDA濃度のカテゴリーが1段階上がることは、毎晩の睡眠時間の平均0.39時間の短縮と関連していた。また、追跡調査の結果からは、PFHxSとPFOAの濃度のカテゴリーが1段階上がることは、平均で0.39時間と0.32時間の睡眠時間の短縮と関連していた。一方、PFOS濃度のカテゴリーが1段階上がることは、睡眠障害スコアの2.99点の増加、睡眠関連障害スコアの3.35点の増加と関連していた。

 論文の筆頭著者で、USCケック医学校のShiwen Li氏は、「われわれが検出した血液中のPFASは、おそらく出生後の曝露によるものだが、出生前の胎児期の曝露に起因している可能性もある」と述べている。

 研究グループは、これら4種類のPFASについて分析するため、化学物質と疾患、遺伝子発現の変化の関連についての研究をまとめたデータベースを使用し、PFASの影響を受ける遺伝子と睡眠障害に関与する遺伝子の重複を調べた。

 その結果、600を超える遺伝子候補のうち、PFASによって活性化される7つの遺伝子候補が睡眠に影響を与えると推定された。その一つは、コルチゾールというホルモンの産生を助ける免疫系のタンパク質(HSD11B1)をコードする遺伝子だった。コルチゾールは睡眠覚醒リズムの調節で重要な役割を果たしている。また、カテプシンBをコードする遺伝子もPFASの睡眠への影響に関与していることが示された。カテプシンBは、記憶力や思考能力に関係し、アルツハイマー病患者の脳に存在するアミロイドβの生成に関与することが示唆されている。一方で、アルツハイマー病自体も睡眠障害に関連している。

 Li氏は、「睡眠の質はほとんど全ての人に関わる問題だ。そのため、今回の研究で示された睡眠に対するPFASの影響には政策的な対応を考慮する必要がある」と話す。また、同氏は、「長期的に見ると、質の悪い睡眠は神経学的な問題や行動面の問題、2型糖尿病、アルツハイマー病などに関連していることが指摘されている」と同大学のニュースリリースで付け加えている。

[2024年10月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら