週に1〜2回しか運動をしない「週末戦士」でも、運動を全くしない人に比べると、高齢になったときの頭の回転の速さは定期的に運動をしている人と同等であることが、新たな研究で明らかになった。ロス・アンデス大学(コロンビア)スポーツ科学分野のGary O’Donovan氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に10月29日掲載された。研究グループは、「本研究は、週末戦士の運動パターンと定期的な運動パターンの双方が、軽度認知症(MCI)のリスク低下に同程度の効果があることを示した初の前向きコホート研究だ」と述べている。
この研究でO’Donovan氏らは、メキシコシティ前向き研究の参加者から抽出した1万33人(平均年齢51±10歳)のデータを分析した。これらの研究参加者は、1998年から2004年のベースライン調査と2015年から2019年の追跡調査を受けていた。参加者を、ベースライン時の週当たりの運動頻度(1回未満、1〜2回、3回以上)に基づき、運動をしない群(1回未満、7,945人)、週末戦士群(1〜2回、726人)、定期的運動群(3回以上、1,362人)の3群に分類した。また、2回目の調査時に参加者のMCIをミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination;MMSE)で評価し、「週末戦士」の運動パターンとMCIとの関連を検討した。MMSEでは、一般の人におけるMCIのカットオフ値とされる22点以下と、高齢者におけるMCIのカットオフ値とされる23点以下の2つの基準を用いた。
平均追跡期間16.2年の間に、運動をしない群で2,045人(25.74%)、週末戦士群で103人(14.19%)、定期的運動群で252人(18.50%)がMMSEのスコア22点以下で定義されるMCIと判定されていた(計2,400人)。解析の結果、MCIリスクは、運動をしない群に比べて、週末戦士群で25%(ハザード比0.75、95%信頼区間0.61〜0.91)、定期的運動群で11%(同0.89、0.78〜1.02)、週末戦士群と定期的運動群を合わせた場合で16%(同0.84、0.75〜0.95)、それぞれ低いことが示された。この結果から、理論的には、もし全ての中年期の人が週に1〜2回、運動やスポーツを行った場合には、MMSEのスコア22点以下で定義されるMCIの13%、23点以下で定義されるMCIの10%が回避されると推定された。
このような結果を受けて研究グループは、「この研究結果は、忙しい人でも週に1~2回のスポーツや運動のセッションに参加することで認知機能の維持にメリットが得られることを示唆するものであり、重要だ」と結論付けている。また、運動が脳の健康にもたらすベネフィットについては、「運動は、脳の健康維持に有益な神経化学物質の分泌を促進し、脳の変化と適応の能力をサポートすることで、脳に良い影響を与える可能性がある」との見方を示している。
さらに研究グループは、「週末戦士の運動パターンは、忙しい人にとってより便利な選択肢となる可能性があるため、本研究は政策と実践に重要な意味を持つ」と述べている。
[2024年10月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら