心臓に問題を抱える数多くの米国人が、心拍を正常化して心イベントを予防する小型の植え込み型除細動器(ICD)を使用している。しかし、極端に暑い日には、より気温が低い日と比べて、ICD装着者が不整脈の一種である心房細動(AF)を起こすリスクが約3倍に上昇することが新たな研究で示された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院環境保健学のBarrak Alahmad氏らによるこの研究は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16~18日、米シカゴ)で発表された。
専門家らは、気候変動によって気温が摂氏38度に達する日が増えるにつれて、この脅威は高まる可能性があると指摘している。AHAに協力する専門家の一人で、今回の研究には関与していない米ケース・ウェスタン・リザーブ大学教授のSanjay Rajagopalan氏は、「著しい気温上昇のリスクがある地域に住んでいて、影響を受けやすい人は、この研究結果に留意し、必ず適切な予防策を取って涼しさを保ち、水分補給を行うよう心がけてほしい」と話している。
Rajagopalan氏は、「これは、ICDで検出されたAFと気温の急上昇との関連を示した最初の研究かもしれない」とAHAのニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、「この研究結果は、外気温と心血管の健康の関連について検討した最近の研究に続くものだ。高齢化と肥満の増加に伴い一般人口でのAFの有病率が上昇しつつあることを考慮すると、今後は、気温上昇にも対処する必要があるかもしれない」と話している。
Alahmad氏らは今回の研究で、2016~2023年にICDまたは両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)の植え込み術を受けた2,313人の患者データを調べた。植え込み術を受けた際の患者の平均年齢は約70.6歳で、男性の割合は78%だった。対象者には肥満者が多く、またほとんどの患者に心筋症(心臓のポンプ機能が低下する疾患)があった。Alahmad氏らは、ICDやCRT-Dで検出された初発AFを調べ、外気温との関連について検討した。
その結果、AFの発生リスクを最も低下させると考えられる「至適外気温」は比較的低く、摂氏5度から8度と推定された。一方、外気温が極端に高い日には、ICDやCRT-D装着者のAFリスクが大幅に上昇することが確認された。例えば、理想的な外気温のときと比べると、摂氏39度、40度、41度の日には、これらのデバイス装着者のAF発生リスクが同順で、2.66倍、2.87倍、3.09倍に上昇していた。また、AFの発生数は、早朝(0時〜7時)よりも就労時間中(8時〜17時)に多く、週末よりも平日に多いことも示された。さらに研究を進めた結果、30分以上続くAF発作に関しても、同様の傾向が認められた。
共同研究者の一人で、米マサチューセッツ総合病院の心臓電気生理学者であるTheofanie Mela氏は、「不整脈がもたらす負担を最小限に抑えるため、この研究結果の根底にある生理学的なプロセスを理解し、AFを引き起こす状態を回避することに注力する必要がある」とAHAのニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、「その一方で、患者には極端な温度の環境を避けること、エアコンを使用して体が極端な暑さによる強いストレスを受けないようにすることを勧める」と助言している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2024年11月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら