血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/13

 

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。

17ヵ国46施設の非無作為化単群市販前試験

 本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。

 対象は、国際的なガイドラインに基づき、1次または2次予防としてのICDに関して、クラスIまたはIIaの適応がある患者とされた。徐脈時ペーシングまたは心臓再同期療法を要する患者や、胸骨切開を受けた患者は除外された。被験者は、胸骨下に1本のリードを植え込む血管外ICDシステムの留置を受けた。

 有効性の主要エンドポイントは、血管外ICD植込み時の除細動の成功とされた。除細動が成功した患者の割合の片側97.5%信頼区間(CI)の下限が88%を超えた場合に、有効性の目標を達成したと判定された。

 安全性の主要エンドポイントは、6ヵ月時に、血管外ICDのシステムまたは手技に関連する重大な合併症がない場合とされた。このような合併症がない患者の割合の片側97.5%CIの下限が79%を超えた場合に、安全性の目標を達成したと判定された。

抗頻拍ペーシング成功率は50.8%

 356例が登録され、316例(平均[±SD]年齢53.8±13.1歳、女性25.3%)が血管外ICDの対象となり、このうち40例が血管外ICDの施行前に脱落した。ベースラインの平均BMIは28.0±5.6、平均左室駆出率は38.9±15.4だった。

 植込み時に心室性不整脈が誘発され、除細動テストプロトコルを完了した302例のうち、除細動が成功した患者の割合は98.7%(片側97.5%CIの下限は96.6%、達成目標である88%との比較でp<0.001)であり、有効性の目標が達成された。316例中299例(94.6%)はICDシステムが作動した状態で退院した。

 6ヵ月時に、Kaplan-Meier法によるシステム・手技関連の重大な合併症がなかった患者の割合は92.6%(片側97.5%CIの下限は89.0%、達成目標である79%との比較でp<0.001)であり、安全性の目標が達成された。植込み手技中の重大な合併症は報告がなかった。6ヵ月時に、316例中23例(7.3%)で25件の重大な合併症が観察された。

 一般化推定方程式で評価された抗頻拍ペーシングの成功率は50.8%(95%CI:23.3~77.8)であった。一方、合計で29例が、81件の不整脈エピソードに対し118回の不適切なショックの作動を受けていた。また、10.6ヵ月の平均追跡期間中に、8件で血管外ICDを交換せずにシステムの摘出が行われた。

 著者は、「本研究の結果は、血管外ICDでは胸骨下に電極を留置することで、血管外留置の利点を保持しつつ、pause-preventionペーシングや抗頻拍ペーシングが可能となり、低エネルギーでの除細動がもたらされるとの仮説を支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)