補完代替医療を利用している2型糖尿病患者は健康関連QOLが低い

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/05/18

 

 通院中の2型糖尿病患者の4割弱が何らかの補完代替医療を利用しており、利用者は非利用者に比べて健康関連QOLが有意に低いという調査結果が報告された。香川大学医学部衛生学教室の森喜郎氏らの研究によるもので、詳細は「Epidemiologia」に1月20日掲載された。

 補完代替医療(complementary and alternative medicine;CAM)は、標準的な現代医療と合わせて、または単独で実施される、非標準的な医療のこと。具体的には、健康食品やサプリメント、マッサージ、アロマセラピー、ヨガ、処方によらない漢方、鍼灸、温熱療法、音楽療法、森林療法などが該当し、一般的に医師の判断ではなく患者自身の意思によって利用される。

 これらのCAMのうち漢方や鍼灸などの一部はエビデンスが存在するものの、総じて有効性の根拠が乏しい。それにもかかわらず、標準的な現代医療でも治癒が見込めない疾患や経過が長期に及ぶ慢性疾患の患者などは、CAM利用率が高いことが報告されている。ただし国内の2型糖尿病患者のCAM利用状況については不明点が多い。森氏らは、その実態の把握と、CAM利用と健康関連QOL(HRQOL)との関係性を探るため、以下の調査を行った。

 調査対象は、2021年7月12日~9月17日に坂出市立病院の外来を受診した2型糖尿病患者のうち、CAMおよびHRQOLに関する自記式アンケートに回答した421人。HRQOLは、国際的に用いられている「EQ-5D」という質問票の日本語版を用いて評価した。これは、痛み、不快感、不安、うつなどの程度、日常生活活動などを0~1点の範囲にスコア化して判定するもの。数値が高いほど健康であることを意味し、完全に健康な状態の場合は1となる。

 対象者の主な特徴は、平均年齢67.3±12.8歳、男性58.7%、BMI25.3±4.6、糖尿病罹病期間5,863.9±3,711.7日、HbA1c7.5±1.5%、eGFR61.3±19.6mL/分/1.73m2で、46.3%がインスリン療法を行っており、HRQOLは0.860±0.200だった。

 全体の38.2%の患者が、何らかのCAMを利用していた。最も利用率が高かったのは、サプリメントや健康食品であり、26.6%が利用していた。性別に見た場合、男性のCAM利用率は32.8%、女性は46.0%であり、女性の方が有意に高かった(P=0.006)。ただし、年齢、BMI、罹病期間、HbA1c、eGFRには、CAM利用の有無による有意な群間差は観察されなかった。

 次に、CAMの種類ごとに、利用している患者と利用していない患者のHRQOLを比較すると、漢方や磁気療法、カイロプラクティック、温熱療法、スパセラピーについては、それらを利用している患者群の方がHRQOLが有意に低かった。また、何らかのCAMを利用している患者群のHRQOLは0.829±0.221、利用していない患者群は0.881±0.189であり、前者の方が低値だった。HRQOLに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、罹病期間、HbA1c)を調整後の比較でも、有意な群間差が認められた(P=0.014)。

 喘息患者や炎症性腸疾患などの患者を対象に海外で実施された同様の調査では、CAM利用患者はHRQOLが低いことが報告されている。今回の国内2型糖尿病患者を対象とした研究も、それらの既報研究と同様の結果となった。この理由について論文中には、「CAMを利用したことでHRQOLが低下したのではなく、HRQOLを低下させるような併存疾患や症状がある患者が、標準的な治療に加えてCAMを必要としているという実態を反映しているのではないか」と記されている。

 これらの結果と考察に基づき、著者らは、「CAMを利用している2型糖尿病患者は、利用していない患者よりもHRQOLが有意に低かった。CAMの健康転帰への寄与に関するエビデンスは限られているため、CAMに関する適切な情報提供が重要と考えられる」と総括。また、本研究が単施設で実施された横断研究であるため、「因果関係の理解や他の地域・医療機関の患者群での実態を把握可能なデザインでの研究が必要」と付け加えている。

[2023年5月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら