統合失調症患者では一般集団と比べて喫煙率が高く、喫煙関連の疾患の罹病率や死亡率が高い。一方で、喫煙率を低下させるために、どのような介入が効果的であるかは不明なままである。英国・Nottinghamshire Healthcare NHS TrustのDaniel T. Tsoi氏らによるシステマティックレビューの結果、ブプロピオンが精神状態への影響を及ぼすことなく禁煙達成率を高められることが示された。また、バレニクリンも禁煙達成率の改善が期待できるが、精神状態への有害な影響が除外できず、また、禁煙したら報酬を与えるといった強化随伴性(contingent reinforcement:CR)の介入は、短期的効果が期待できそうであった。その他にはエビデンスが確かな効果的な介入は見いだせなかったと報告している。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。
MEDLINE、EMBASE、PsycINFO(いずれもサービス開始から2012年10月まで)とCochrane Tobacco Addiction Group Specialized Register(2012年11月)にて、禁煙または減煙に関する無作為化試験を検索した。統合失調症または統合失調感情障害を呈する成人患者について、あらゆる薬物・非薬物治療とプラセボまたはその他の治療を比較した試験を適格とし、2人の独立レビュワーが試験の適格性と質を評価してデータ抽出を行った。解析の評価項目は、禁煙達成(禁煙)、総喫煙量の減少(減煙)、あらゆる精神状態の変化とした。禁煙、減煙については、治療終了時と介入終了後6ヵ月時点のデータを抽出した。また同定義については最も厳格なものを用い、入手したデータは生化学的検証を行った。有害事象についてはあらゆる報告に注意を払い、また必要に応じてランダムエフェクトモデルも用いられた。
主な結果は以下のとおり。
・レビューには、34試験(禁煙試験16件、減煙試験9件、再喫煙予防試験1件、喫煙についてのアウトカムが報告されていた他の目的での試験8件)が組み込まれた。
・ブプロピオンとプラセボを比較した試験(7件)のメタ解析の結果、ブプロピオン治療後の禁煙率がプラセボより有意に高かった。
治療終了時の評価(7試験・340例) リスク比(RR):3.03、95%CI:1.69~5.42
6ヵ月後の評価(5試験・214例) RR:2.78、95%CI:1.02~7.58
・また両群間に、陽性・陰性症状また抑うつ症状について有意差はみられなかった。
・ブプロピオン群において、てんかん発作のような重大な副作用の報告はなかった。
・バレニクリンもプラセボと比較して、治療後の喫煙率が有意に高かった。
治療終了時の評価(2試験・137例) RR:4.74、95%CI:1.34~16.71
6ヵ月後の評価(1試験のみで128例、CIもエビデンスに乏しい) RR:5.06、95%CI:0.67~38.24
・精神症状に関してバレニクリン群とプラセボ群には、有意な差はみられなかったが、バレニクリン群の2人で希死念慮と自殺関連行動がみられた。
・金銭(money)の強化随伴性(CR)を検討していた試験(2件)の解析の結果、禁煙率の上昇と喫煙量の低下の可能性があったが、これが長期に持続するかどうかは不明であった。
・統合失調症患者に対する、その他の薬物治療(ニコチン補充療法など)や、禁煙・減煙支援のための心理社会的な介入の試験はほとんどなく、有用性についてのエビデンスは得られなかった。
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(ケアネット)